電力小売りの全面自由化から1年が経過したなか、東京電力の2017年3月期決算は減収減益だった。
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故から6年。その処理を抱える東京電力には厳しい状況が続いているが、新電力参入の影響はどの程度だったのか――。
新電力への切り替えは7.9%に・・・
東京電力ホールディングス(HD)の2017年3月期決算によると、売上高は前年比11.7%減の5兆3577億円で、2年連続の減収。経常利益は2276億円の黒字だったが、前年から30.2%の減益だった
。減収の要因は、火力発電の燃料となる原油や液化天然ガス(LNG)の価格の値下がり。それが燃料費の変動を電気料金に反映する「燃料費調整制度」に基づいて値下げしたことにある。東京電力では、電気料収入が約8100億円減少。このうちの9割(約7720億円)を占めた。
さらに、電力小売りの完全自由化が影響。新電力の参入が相次いだ結果、家庭向けや商店向けを中心に利用者が流れた。
東電管内では、東京ガスやJXエネルギーなどの新電力が「安さ」を売りに、他のサービスとのセット販売で攻勢をかけていた。経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関(OCCTO)によると、電力小売りの全面自由化で電力契約を切り替えた件数は全国で342万7900件(3月末時点)。契約総数の5.5%が新電力などに切り替えたとみている。
東京電力は、この1年に管内の7.9%にあたる181万件の契約を新電力に奪われ、全国平均(5.5%)を2.4ポイント上回った。新電力の販売攻勢は大都市部ほど激しく、「関東エリアは草刈り場となった」(東京電力)。
新電力の影響は、数字のうえでは軽微だった模様だが、東京電力は2017年5月1日のJ‐CASTニュースの取材に、「失った181万件の契約件数は、全国のほぼ半数に当たります。厳しく受けとめています」と話している。
ただ、一方の新電力も伸び悩んでいる。ある証券アナリストは、新電力への切り替えが「思った以上に進んでいないようです」と指摘する。
新電力は「安さ」が売りものではあるが、「セット販売が中心なので、どの程度安くなっているのか、よくわからないなどの、利用者の切り替えに対する不安感があると思われます」とみている。