ドローン(無人飛行機)技術の産業利用が、いよいよ本格的な実用段階に入り、注目されている。
2017年4月19~21日に、千葉・幕張メッセで開かれた「第3回 国際ドローン展」は3日間で6822人の来場者を集め、ドローン技術への関心の高さをうかがわせた。
急速に進展するドローンの実用化
それより先の、2017年3月23日~25日に幕張メッセで開催された「Japan Drone 2017」には、前回の8023人を大きく上回る9603人が集まった。このドローン展の閉幕を受けて、3月27日付の日本経済新聞は「ドローンを課題解決のテコに」との社説を掲載した。
「これまでは空から撮った映像をネットに投稿するといった個人の趣味的な使い方が主流だったが、最近は離島への物流やインフラ点検、自動測量や自動警備など幅広い分野への応用が進み始めた」と、ドローンが活躍する舞台が広がっていると指摘する。
具体的には、害獣対策用(赤外線カメラなどを装備したドローンを山林上空に飛ばして鹿などの居場所を把握し、害獣の撃退につなげる)やインフラ点検用(横浜市は大口径の下水管内でドローンを飛ばし、老朽化した個所を素早く見つける実証実験を開始した)、また地震などの被害状況の把握などへの活用をあげている。
その一方で、課題になっているのが墜落事故や衝突事故の防止など、飛行の安全性の確保だ。これにはドローンの性能や操作性の向上が欠かせない。社説は、「ドローンをうまく安全に使いこなし、人手不足に悩む職場の作業効率の改善や市民生活の安全安心の向上につなげたい」と結んでいる。
ドローンの実用化が進むなか、そんな墜落や衝突防止のための環境づくりもまた急ピッチで進んでいる。
2017年3月30日付の読売新聞には、「ドローン分野で提携、東電とゼンリン 安全飛行に活用」との記事が掲載された。東京電力ホールディングスと住宅地図大手のゼンリンが、ドローンの安全飛行を支援する事業で提携。東電の送電鉄塔や電柱などを示す3次元の地図を共同で作成するほか、鉄塔や電柱をドローンが飛行する際の目印としても活用する。
東京電力には約5万基の送電鉄塔と約590万本の電柱があり、電線の長さは約35万キロメートルに及ぶ。こうした設備の位置や高さなどの情報はデータ化が進んでおらず、ドローンの飛行時に鉄塔や電柱に衝突する恐れがあったそうで、2019年度の実用化を目指すという。
米FAAも認めた、30年の実績と技術力
そうしたなか、ヤマハ発動機もドローンを使ったサービスの提供に乗り出している。同社の事業構成(16年12月期)は、二輪車(62%)とマリン(20%)で全体の82%を占めている。同社はエンジンを動力とする農薬散布などに使われる農作業用無人ヘリコプターの国内最大手。また、2018年には農薬散布用の小型ドローンを発売する計画もあるようだ。
ドローンに着目している企業は少なくないが、ヤマハ発動機は1983年に、農業用小型無人飛行機(現在のドローン)の研究に着手。30年近く開発を続けており、この分野の世界市場においてトップの実績と技術を誇っている。
2015年5月には世界のドローンに先駆けて、同社が開発した農薬散布用ドローン「RMAX」(無人ヘリコプター)が、米連邦航空局(FAA)の承認を得た。これは、米国でドローンの商用利用を正式に認めたものという。
もともと高性能エンジン(モーター)を操る技術力を有しているので、幅広い分野での利用が見込める。現状では、ドローンの売り上げに対する貢献度は小さいが、同社のもつ技術力、知名度、これまでの実績を考えると、「のびしろ」は大きいとみる。
さらに、為替連動性が大きい銘柄とされるヤマハ発動機株は今後、円安になると株価が上昇する可能性が見込める。もちろん、為替リスクはあるものの、本業の業績がよく、株価の動きが軽いことも、ヤマハ発動機株が投資先としておもしろいと思う理由だ。
株式相場の調整局面で、下げる場面があれば、2000円~2200円あたりで「買い」の好機とみている。(石井治彦)
2017年5月1日現在 保有なし
年初来高値 2017/03/14 2795円
年初来安値 2017/02/01 2287円
直近 終値 2017/05/01 2641円