「最低時給1500円」の実現で、社会は劇的に変わるのか?

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GDPが大きく向上することはないかも...... 

   では、最低時給1500円が実現すれば、社会は劇的に変わるのだろうか――。意外にそう多くは変わらないというのが筆者の見方だ。

   現在、非正規雇用の賃金上昇率は正規雇用を大きく上回るスピードで上がり続けている(2016年度正社員0.2%増に対して非正規3.3%増)。すでに都内日中1200円求人は珍しくない状態であり、このペースなら来年中には1300円に到達するはずだ。

   もちろん議論になっているのは最低賃金の引き上げではあるが、そこから1500円までは、遠いようで意外に手の届く水準だろう。

   現在、すでにさまざまな業種で業務の効率化が進められている。サービスの見直し、座席数や営業時間の縮小などがあるが、共通するのは時給を引き上げつつ、労働力は抑える工夫だ。結果、時給の低い求人は淘汰され、平均時給は上昇を続けている。

   そのコストは、深夜に利用できなくなったりレジ前に並んだりといった見えない形で、われわれ消費者が負担していることになる。最低賃金の引き上げはこの流れをちょっぴり後押しする程度の話であり、国内総生産(GDP)が大きく向上したり、自衛隊に志願者が殺到したりなんてことにはならないだろう。

   でも、それは同時に、非正規雇用労働者の問題の多くも、引き続き社会に残されたままだということでもある。

   同一労働同一賃金の実現や非正規雇用の貧弱な社会保障をどう見直すべきか――。大企業打倒とか反原発・反安保とか、明後日の方向に曲がることなく、非正規雇用労働者の中から湧き上がった運動がまっすぐに前進していくことを、筆者は期待したい。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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