社長、「ダラダラ会議」やめてください!
「中小企業に移って真っ先に感じたことは、一人あたりの労働密度の薄さです。曲がりなりにも一部上場企業に長年勤めていた身からすると、労働密度はその半分にも満たないかもしれません。皆、口では『昔に比べて忙しい』と言っていますが、時間を気にしない打ち合わせとか勤務時間中に各個人がつくるアイドルタイムも長い。だからその分、給与が低いとも言えるのですが...... 今、働き方改革の論議が盛り上がっていますが、労働環境改善の問題で大企業と中小企業の労務環境を一緒に論じることは適切ではない、と思わされます」
Eさんは、そう話します。
銀行に長年勤め、中小企業のお手伝いを通じてその職場や勤務実態を見てきた私も、Eさんの意見に同感です。
そもそも水平分業的存在の中小企業では、夜遅くまで働くこと、休暇も返上して会社に出勤することが善しとはされていませんし、サービス業を除く中小企業の残業削減は日中業務の効率化でかなりの部分が吸収できるというのが、私の見解でもあります。また収入を増やすために残業をしている、と見受けられる例も間々目にしています。
Eさんの結論は、なかなか興味深いものでした。
「転職から3か月、労働環境やそのムードを作り上げるものは大企業では評価に結びつく制度やルールなのですが、中小企業では社長なのではないかと思い始めました。日々社長の動きを見ていると、その仕事の密度の薄さや長時間の打ち合わせをはじめ時間管理の無頓着さが、組織風土として根付いてしまっていると私には思えるのです。今は私が環境に慣らされる前にこれを変えないと、この風土は永久に続くのではないかと思っています」
国をあげて盛り上がりを見せつつある働き方改革の議論ですが、大企業とは労働環境が異なる中小企業においては、社長自身の働き方改革こそ、最優先で取り組むべき課題なのかもしれません。(大関暁夫)