「働き方改革」に求められるのは経営の覚悟
さらにここに来て問題を大きくしているのが、低コスト労働力として企業のコストダウンの切り札手的存在になっていた若年労働力の絶対数の減少です。これは他でもない、少子化の影響が大きく、飲食業界のみならず小売業界、さらには最近話題のヤマト運輸に代表されるサービス業全般において、同様の問題が噴出しているのです。
これらの働き過ぎの状況を解消するには、経営の覚悟が求められます。
すなわち、時短や休暇取得の促進は、生産性や効率性の低下、あるいはコスト増を促し、その結果、収益の低下を招くリスクと立ち向かう覚悟が求められるのです。
そのリスクを、働き手に転嫁することはもはや許されず、経営課題として経営者がそれを飲み込むべきである、というのが働き方改革の趣旨であると、個人的には受け止めています。
しかし、ここで気になるのは、日本における就業人口のもう一つの大きな比率を担っている中小製造業の働き方改革です。
「大手さんが就業時間を短縮させるとか、休暇取得を増やすとか、それをわれわれ中小製造業に押し付けられても困りますよ。大手さんとはまったく実態が違うのだから」
都内の下町で、従業員40人ほどの機械部品の製造会社を経営するY社長が言いました。
「もしそんなことを強制されたら、最終的にはコストアップにつながる話ですから、われわれは潰れてしまいます。社員たちが『うちは何をしてくれるのですか』とか言い出すのじゃないかと、働き方改革のニュースを見るたびにビクビクしています」
この話を聞き、たまたま最近20年以上勤めた大手メーカーから中小製造業の管理職として転職したEさんが、「中小企業職場環境の真実」とも言うべき話をしていたのを思い出しました。