大阪市北区に開校したばかりの、カフェの開業を支援する専門スクール「カフェズライフ」の授業が、至れり尽くせりだと評判になっている。
本物のカフェを出店・経営する実体験型の授業が特徴で、人気カフェの現役女性オーナーらがメインで講師を務める。カフェのオーナーを目指す転職組やリタイヤ組といった社会人をメインターゲットに、「開業」に特化。こうしたカフェ開業専門のスクールは「関西では初めて」という。
カフェで起業! 女性に人気
開校初日の2017年4月17日に講師を務めたのはカフェレストラン「muse osaka」(大阪市西区)やベーカリー&ケータリング「foodscape!」(福島区)など、大阪市内に7店舗の人気飲食店を展開するエルワールド(中央区)の高橋香織社長。受講生は、午前中にミネストローネやサラダを作る調理実習に取り組み、午後からは、カフェ開業のロードマップづくりなどの講義を受けた。
20年間務めた会社を退職し、滋賀県から参加した40代の女性は「具体的に開業スケジュールを見ていくことで不安の一部は解決した。話を聞いていると、できそうな気がしてワクワクする。実家にスペースがあるので、1年半後くらいに開業したい」と意欲をみせる。
高橋社長は、「女性はイメージや願望が先行していて、原価率や人件費など具体的な数字に弱い人が多いが、仕組みさえ理解すれば堅実経営で成功しやすい。イメージを数字に落とし込めるようになってほしい」と話す。
「カフェズライフ」は社会人を対象に開業だけに特化するが、なかでも女性を応援したいという。受講者にはシングルマザーなど、自立と子育ての両立のためにカフェの起業を目指す女性が多かった。
授業は、1クラス10人程度の少人数制。8クラスで、受講者の約7割を女性が占める。
「カフェは初期投資や必要資格が比較的少ないため、未経験者でも開業しやすい」(「カフェズライフ」の野田貴之代表)とされる。その一方で、「廃業率は開業から2年間で50%」と、継続が難しいともいう。
なにしろ、競争相手にはスターバックスやドトールコーヒー、タリーズ、コメダ珈琲などの大手コーヒーチェーンがしのぎを削り、それだけでも全国で3700を超す店舗がある。そう甘くない世界なのだ。
一方、そんな「カフェ」の事業に飛び込んでいく、カフェオーナーになるための専門スクールや開業するうえでの調理技術などを学ぶための専門学校も、大阪だけでも辻調理師専門学校カフェクラスやA cafe school大阪、大手前製菓学院専門学校などと、いろいろある。カフェの開業を支援する専門スクールもまた、独自色を打ち出していく必要があるわけだ。
開業後も、カフェ経営をコンサルティング
「カフェズライフ」の主なカリキュラムは「カフェオーナー開業コース」(週1回、1年間)で、必要な技術と知識を総合的に学び、6月以降は「本物のカフェ」を開業・経営する「実体験型」の授業を実施する。
そこでは、店舗物件の内見や選定などを不動産仲介業者と、厨房設備の選定や設置などを設備業者と、レイアウト図面作成や水道・ガス・電気工事などを内装デザイン業者と打ち合わせを実施。事業計画書の作成や融資担当者へのプレゼンテーション、諸手続き、メニューの開発など、開業までに必要な課題の一つひとつに、実践的に経験を積むことができる。
また、週2回、1年のカリキュラムを半年で学ぶ「速習コース」も用意した。
講師陣には現役カフェ経営者ら約20人が参画。税理士や空間デザイナーなど、カフェの経営に関係の深い専門家がブレーンとなり、実践的な授業を支える。
面倒見のよさは、開業前だけでない。野田貴之代表は、「長く愛される店を経営してもらうことを目指す」と話し、開業後も講師やブレーン、卒業生とのつながりをもてる相談会や勉強会を定期的に実施する考え。開業後もコンサルティングなどで支えるという手厚さだ。
「カフェはいろいろなことができる。コミュニティーだったり、癒しの場所であったり。カフェを愛すること。カフェの持つ力を信じることがはじまり」と、野田代表は起業を呼びかける。(水上守)