出資法違反の疑いで熊本県警から国際手配され、逮捕された62歳の日本人女性。「自称38歳」が独り歩きして話題になっているが、彼女は日本のみならず海外のホストクラブでも豪遊、数千万円以上を貢いでいたという。
中高年女性がハマるホストクラブの魅力とはいったい、なんだろう。
枝豆だけで、ポンと50万円
私のパートナーである「ヒモさん」は、東京・新宿の歌舞伎町で元ナンバーワンホストだった。本人はあまり当時のことを話したがらないが、小さな店とはいえ、ひと月に1000万円も売り上げていたという実績は、率直にスゴイ!と思う。
ヒモさんを指名していたお客は、風俗嬢やホステス、キャバクラ嬢など「夜のお仕事系」から、看護師や秘書などの「普通のOL系」、あとは何といっても「年上のオンナ系」である。ここには社長夫人や、会社経営の女性などが含まれるが、彼女たちのお金の使い方はもの凄いらしい。
マダム系の「太客」(他の客より多額のお金を落としてくれる客)が「閉店間際に訪れて、お酒も頼まず『枝豆』だけで50万円の会計にしてくれた」なんてエピソードはザラで、「伊勢丹でオーダーメイドのコートを仕立ててくれて、お会計はよく分からないが百万円くらいになっていたかもしれない」とか、「外車をいとも簡単に買ってくれようとする」など、大人のホスト遊びは優雅で豪華なのである。
マダムたちは弱冠23歳のヒモさんを、まるで若い恋人のように扱い、自分好みに育て上げる。すべては「お金」の成せる業だ。
「育成ゲーム」の快楽
ヒモさんは私から見ても、礼儀作法などしっかりしており、わりと誠実なホストだったと推察される。そういう素直な若い男を自分好みに育てて感謝され、デートもしてもらえるなんて...... まるでファンタジーというか、いってみれば「ギャルゲー」である。
男性をターゲットとした人気ゲームの中には、美少女を好きなように育てるストーリーがよく見られるが、この「育成」の快楽は、マダムのホスト遊びに通ずるものがあると思う。
出資法違反の疑いで逮捕された「自称38歳」のサバ読み女性(実年齢は62歳)が入れあげたという、歌舞伎町のホストのインタビューを週刊誌で読んだが、「デートの待ち合わせは一流ホテルで、スーツケースに札束が入っていて、『いくらあればいい?』と現金を持ち出していた」という。
嘘か本当かは分からないが、似たような話はヒモさんからも聞いたことがある。そうやってお金の力で若い男とデートし、好きなものを買い与える快楽は、味わった人にしか分からない中毒性があるのかもしれない。
カネと権力のある中高年男性がホステスに貢ぐ話は聞くが、同じことを女性もやってみたいと願っても不思議はない。
自分好みの若いイケメンが、自分の買ったものを身に着け、どんどん輝いていく。ホストはコミュニケーションが巧みなので、女性が普段の生活では絶対に言われないような感謝の言葉や、甘い言葉もたくさんかけてくれる。若いイケメンを引き連れてデートしている姿は注目を浴びるだろう。夢のような時間である。
ホストにハマる中年女性の心中は、育成シュミレーションゲームだったのだ。その快楽は、ゲームで再現されるほどには「ファンタジー」要素が強い。夢の世界をまた味わいたくて、どんどんやってしまうのも分かる。
もちろん犯罪はダメだが、「お金の力でイケメンを育てるだけ」なら誰も傷つかないし、若い世代に資産を還元する社会的意義だってある。そうか、中高年女性のホスト通いには、福祉的な再分配の役割もあるのだ!
なんて、62歳女性の詐欺事件から想像力をたくましくしてしまった。いいなあ、ホストクラブ!?(北条かや)