「育成ゲーム」の快楽
ヒモさんは私から見ても、礼儀作法などしっかりしており、わりと誠実なホストだったと推察される。そういう素直な若い男を自分好みに育てて感謝され、デートもしてもらえるなんて...... まるでファンタジーというか、いってみれば「ギャルゲー」である。
男性をターゲットとした人気ゲームの中には、美少女を好きなように育てるストーリーがよく見られるが、この「育成」の快楽は、マダムのホスト遊びに通ずるものがあると思う。
出資法違反の疑いで逮捕された「自称38歳」のサバ読み女性(実年齢は62歳)が入れあげたという、歌舞伎町のホストのインタビューを週刊誌で読んだが、「デートの待ち合わせは一流ホテルで、スーツケースに札束が入っていて、『いくらあればいい?』と現金を持ち出していた」という。
嘘か本当かは分からないが、似たような話はヒモさんからも聞いたことがある。そうやってお金の力で若い男とデートし、好きなものを買い与える快楽は、味わった人にしか分からない中毒性があるのかもしれない。
カネと権力のある中高年男性がホステスに貢ぐ話は聞くが、同じことを女性もやってみたいと願っても不思議はない。
自分好みの若いイケメンが、自分の買ったものを身に着け、どんどん輝いていく。ホストはコミュニケーションが巧みなので、女性が普段の生活では絶対に言われないような感謝の言葉や、甘い言葉もたくさんかけてくれる。若いイケメンを引き連れてデートしている姿は注目を浴びるだろう。夢のような時間である。
ホストにハマる中年女性の心中は、育成シュミレーションゲームだったのだ。その快楽は、ゲームで再現されるほどには「ファンタジー」要素が強い。夢の世界をまた味わいたくて、どんどんやってしまうのも分かる。
もちろん犯罪はダメだが、「お金の力でイケメンを育てるだけ」なら誰も傷つかないし、若い世代に資産を還元する社会的意義だってある。そうか、中高年女性のホスト通いには、福祉的な再分配の役割もあるのだ!
なんて、62歳女性の詐欺事件から想像力をたくましくしてしまった。いいなあ、ホストクラブ!?(北条かや)