ベテラン経営者よ、亡き友が遺した教訓を聞いてくれ!

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   先日、神奈川県川崎市内の踏切でお年寄りを助けようとした銀行員が亡くなられたという事故があり、メディアで勇敢な人助けの悲劇として大きく取り上げられていました。

   実はこの亡くなられた銀行員、私の長年来の友人Kさんでした。その昔には私の結婚式の司会を務めてくれ、最近では2017年1月に私が主宰する交流フォーラムにも顔を出してくれていた、大変親しい間柄でもありました。

  • 過去の自分だったらと……
    過去の自分だったらと……
  • 過去の自分だったらと……

警報器が鳴り始めて約40秒

   突然の訃報に接し、なぜ、どうして、なんとかならなかったのか、悲しい、切ない、やるせない...... さまざまな感情が入り乱れて、あまりのショックに数日間はろくに仕事が手につかない日が続きました。

   事故の現実を少しでも詳しく知りたいと、さまざまなソースをたどり、知り合いの新聞記者からもありったけの情報を得、かなり詳細なことが分かってきました。

   その結果、彼が自ら死を厭わず飛び込んだ今回の事故を通じて、彼が残してくれたひとつの教訓に行き着くことができました。今回は、そんな話に少しお付き合いいただければ幸いです。

   事故は、土曜日の朝9時過ぎに起きました。Kさんが踏切を渡り切った時に、踏切の前で立ち尽くす老人を目にします。おそらく彼はすれ違いざまに、「このお爺さんは、何をしているのだろう」と思ったのでしょう。その場を通り過ぎ踏切脇の改札に向かったその時に、警報機が鳴るのが聞こえ、彼は気にかかったお爺さんのほうを振り返ります。

   すると、お爺さんは降りかかる遮断機をくぐって、線路上で立ち止まったのだといいます。「危ない! あの爺さん、何やってるんだ! 」。彼は恐らく心の中でそう叫んで、踏切へと引き返し、降りた遮断機をはさんで叫びながら手招きをしたそうです。

   「おじいちゃん、何やってるの! 電車が来るよ、危ないから早くこっちに来て! 」

   線路上で立ち止まったお爺さんは、彼の呼びかけに耳を貸すことなく、そのままの姿勢で電車が来るのを待っているかのように立ち続けていました。彼は警報機が鳴り続けるなか、精一杯の大きな声を張り上げて、お爺さんに「危ない」「戻れ」「早く」と叫び続けました。

   警報器が鳴り始めて約40秒。踏切に向かって猛スピードで迫る快速特急の姿が彼の視界に入り、もうこれ以上時間的な猶予はない、そんな状況に追い込まれます。彼は一歩たりとも動く気配のないお爺さんを説得するのは無理だと思い、とっさに目の前の遮断機をくぐり、その腰を掴んで線路から外に出そうと力いっぱい引っ張ったのでした。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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