車両まるごとの「優先車両」
とは言え、体の不自由な人、妊婦、老人などには優先的に座ってもらいたい。そこで、僕は各車両から優先席をなくす代わりに、車両まるごとの「優先車両」を設けるよう提案したい。
この連載の5回目に「女性専用車両」はいらないと書いた。これをなくせば、10両編成で2両やそこらの優先車両を設けられるのではないか。体に支障のない連中は、さすがに恥ずかしくて、この優先車両には乗ってこれないはずだ。
優先車両が満員になることもあるだろう。その際には、弱い者同士で互いに席を譲り合おうではないか。座っている僕の前に、もし妊婦が立ったなら、たとえどんなに疲れていても、僕は立ち上がるつもりだ。
想像するところ、満員電車で弱者を横目に席を譲らない若者にも、内心忸怩(じくじ)たるものがあるかも知れない。席を譲るべきだとは思うけど、自分も疲れている。できれば座っていたい。眠っているふりをしようか――。
優先車両ができれば、そんな葛藤も消える。精神衛生上もきわめていいのではないだろうか。(岩城元)