その14 電車の優先席【こんなものいらない!?】

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車両まるごとの「優先車両」

   とは言え、体の不自由な人、妊婦、老人などには優先的に座ってもらいたい。そこで、僕は各車両から優先席をなくす代わりに、車両まるごとの「優先車両」を設けるよう提案したい。

   この連載の5回目に「女性専用車両」はいらないと書いた。これをなくせば、10両編成で2両やそこらの優先車両を設けられるのではないか。体に支障のない連中は、さすがに恥ずかしくて、この優先車両には乗ってこれないはずだ。

   優先車両が満員になることもあるだろう。その際には、弱い者同士で互いに席を譲り合おうではないか。座っている僕の前に、もし妊婦が立ったなら、たとえどんなに疲れていても、僕は立ち上がるつもりだ。

   想像するところ、満員電車で弱者を横目に席を譲らない若者にも、内心忸怩(じくじ)たるものがあるかも知れない。席を譲るべきだとは思うけど、自分も疲れている。できれば座っていたい。眠っているふりをしようか――。

   優先車両ができれば、そんな葛藤も消える。精神衛生上もきわめていいのではないだろうか。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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