日本は現在、マイナス金利ですから、銀行に預けてもお金はほとんど増えません。
どうしても増やしたいなら変動商品を買うしかありません。投資信託や株式、外国有価証券など、リスクが大きいものから比較的小さいものまでさまざまな変動商品があります。
安いときにたくさん買う
値段が動く変動商品の買い方の基本は、「安いときに買って、高いときに売る」――とはいっても、漠然と市場をながめていて「今が安い」と判断するのはとても難しいものです。
皆さんに紹介したい分かりやすい投資方法として「ドル・コスト平均法」があります。これは、毎月一定の金額を決めて変動商品を買い続けるというシンプルな買い方です。
たとえば毎月1万円、投資信託Aを買うことにしましょう。Aの1単位が1万円なら1単位を買えます。翌月5000円に下がっていたら2単位が買え、2万円に上がっていたら0.5単位しか買えません。こういう調子で同じ投資信託Aを毎月1万円ずつ買い続けるわけです。
ポイントは、安いときにたくさん買っているということです。平均コストが安くなり、自然に「安いときに買う」を実践しています。数年後、忘れたころに、それなりのお金が貯まっているかもしれません。
恐ろしいのは、変動商品の価格が下落することではなく、生活費に充当すべきお金を注ぎ込んでしまう事態です。先輩から言い聞かされた金言を思い出します。「人に貸す金、好きな人に貢ぐ金、投資に使う金、この三つは返ってくると思うな」。
変動商品は、失ってもいいような金額の範囲で買うべきです。手取りが月20万円あって18万円で生活できるなら、余った2万円の範囲内で買うということです。投資信託は、今の時代、ネット検索すれば運用実績や手数料などをすぐに調べられますし、ランキングの上位のものを選ぶこともできます。素人はプロに勝てませんから、プロに運用してもらうのがよいと思います。
ちなみにお金は財布のお金(日々の生活費)、銀行のお金(いつでも現金化できる)、なくなってもいい投資のお金(変動商品を買うのもいい)に分けて考えましょう。この考え方は、「財産三分法」といわれています。
スキルを磨くために使うのもいい
なくなってもいいお金は、変動商品を買うだけが使い道ではありません。スキルを身につけるために、自分に投資することも選択の一つです。
先日、北海道に行った折、とある大学の掲示板を見ていたら「カタコトの中国語できる人急募」という薬局チェーンの求人が目に留まりました。時給は3000円。一般の学生のバイトの時給は900円程度だそうですから、3倍以上です。中国語というスキルがあれば稼げるという一つの例です。
社会人になってからも勉強しようという人が増えています。ライフネット生命の社員にも、40代で大学院に進学した女性が現在2人います。いくつになってもスキルアップを目指して勉強するというのは、世界でみれば常識です。日本も、年齢によって生き方が束縛されない「年齢フリー」の社会になりつつあります。その傾向はいっそう強まるでしょう。
何か資格を取ると仕事の上で有利になります。税理士や社会保険労務士でも、英語の検定でもいい。英語ができれば、世界で働けます。
なくなってもいいと取り分けたお金が、使い方によっては人生をさらに豊かにしてくれるかもしれないのです。(出口治明)