「職場に『健康第一主義』のような先輩がいて、二言目には『仕事で無理をして体を壊したら元も子もない』と言います。しかし身を入れずに仕事をするなどできませんし、少々無理しても頑張るのがサラリーマン、と反発したくなります。私の考え、今どきヘンでしょうか」
ヘンじゃないですよ。でも先輩の考えも分からないではない。
「人生の力点」の置き場所
人生の力点をどこに置くかだと思う。私は、あなたのような考えだった。だから無理して働いたし、残業代もつけずに毎日、深夜まで残業した。
同じ社宅のある人が奥さんから毎日、遅く帰って来て、もっと早く帰って来てよと叱られた。
彼は、「耳を澄ませてみろ」と自分の耳に手を添えた。奥さんは、怪訝そうにしながらも言われるままに耳に手を添えた。
コツコツコツ......。
コンクリートの社宅の階段を上がる足音。
「あれは江上さんだ。江上さんより俺は早く帰宅しているんだ」
彼は言った。
奥さんは、「そうね」と言ったきり黙ってしまった。どのように納得したかはわからない。しかし彼以上に残業している人もいると知り、銀行員の仕事の過酷さに同情したんだろうね。
私は頑張るのがサラリーマンと思っていたけど、妻からは「そんなに働いても暖簾分けしてもらえないのよ。体を壊したら元も子もない」とよく叱られた。妻の言葉と私の考えの間で揺れながら、バランスを取っていたサラリーマン人生だったね。
「重要なのは長く無事に務めあげること」
あなたも先輩の考えを無下に否定せず、「どうして先輩はそうお考えなのですか」と尋ねてみたらどうだろうか。
そうすれば先輩は、目から鱗が落ちるようなサラリーマン哲学を披露してくれるかもしれないし、また「健康第一」という考えをするようになったきっかけの話をしてくれるかもしれない。
おそらく先輩は、何か趣味があるのだろうね。音楽とか、山とか、小説とかね。そうしたことと「二刀流の人生」を歩んでいるから、それを隠すために「健康第一」なんて言っている可能性はある。
そうなると、夜の付き合いなどせずに帰宅し、原稿を書いたり、ピアノを弾いたり、登山訓練しているかもしれない。「健康第一」なんていいながら、結構、健康をないがしろにしていたりね(笑)。
いずれにしてもサラリーマンは長く無事に務めあげることが一番重要だ。これはなかなか難しい。そのためには「健康第一」ということは当然のことだ。あなたも体や精神が壊れるほど頑張ることはないというのが一般的な答え。
だけど、あえて「しかし」と言わせてもらえれば、サラリーマンと言えど、「ここぞ」という頑張りどころがある。その時は必死で頑張るべきだ。絶対に体は壊れないから。精神と肉体が一致して、あなたに前進するエネルギーをくれるからね。