「無理して頑張る」はヘン? 「健康第一」に反発(江上剛)

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「職場に『健康第一主義』のような先輩がいて、二言目には『仕事で無理をして体を壊したら元も子もない』と言います。しかし身を入れずに仕事をするなどできませんし、少々無理しても頑張るのがサラリーマン、と反発したくなります。私の考え、今どきヘンでしょうか」

   ヘンじゃないですよ。でも先輩の考えも分からないではない。

  • 「命の洗濯」は必要だ
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「人生の力点」の置き場所

   人生の力点をどこに置くかだと思う。私は、あなたのような考えだった。だから無理して働いたし、残業代もつけずに毎日、深夜まで残業した。

   同じ社宅のある人が奥さんから毎日、遅く帰って来て、もっと早く帰って来てよと叱られた。

 

   彼は、「耳を澄ませてみろ」と自分の耳に手を添えた。奥さんは、怪訝そうにしながらも言われるままに耳に手を添えた。

   コツコツコツ......。

   コンクリートの社宅の階段を上がる足音。

「あれは江上さんだ。江上さんより俺は早く帰宅しているんだ」

   彼は言った。

   奥さんは、「そうね」と言ったきり黙ってしまった。どのように納得したかはわからない。しかし彼以上に残業している人もいると知り、銀行員の仕事の過酷さに同情したんだろうね。

   私は頑張るのがサラリーマンと思っていたけど、妻からは「そんなに働いても暖簾分けしてもらえないのよ。体を壊したら元も子もない」とよく叱られた。妻の言葉と私の考えの間で揺れながら、バランスを取っていたサラリーマン人生だったね。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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