「職場に『健康第一主義』のような先輩がいて、二言目には『仕事で無理をして体を壊したら元も子もない』と言います。しかし身を入れずに仕事をするなどできませんし、少々無理しても頑張るのがサラリーマン、と反発したくなります。私の考え、今どきヘンでしょうか」
ヘンじゃないですよ。でも先輩の考えも分からないではない。
「人生の力点」の置き場所
人生の力点をどこに置くかだと思う。私は、あなたのような考えだった。だから無理して働いたし、残業代もつけずに毎日、深夜まで残業した。
同じ社宅のある人が奥さんから毎日、遅く帰って来て、もっと早く帰って来てよと叱られた。
彼は、「耳を澄ませてみろ」と自分の耳に手を添えた。奥さんは、怪訝そうにしながらも言われるままに耳に手を添えた。
コツコツコツ......。
コンクリートの社宅の階段を上がる足音。
「あれは江上さんだ。江上さんより俺は早く帰宅しているんだ」
彼は言った。
奥さんは、「そうね」と言ったきり黙ってしまった。どのように納得したかはわからない。しかし彼以上に残業している人もいると知り、銀行員の仕事の過酷さに同情したんだろうね。
私は頑張るのがサラリーマンと思っていたけど、妻からは「そんなに働いても暖簾分けしてもらえないのよ。体を壊したら元も子もない」とよく叱られた。妻の言葉と私の考えの間で揺れながら、バランスを取っていたサラリーマン人生だったね。