今国会での成立を目指している、契約や金銭の支払いに関するルールを定めた民法の規定(債権法)を見直す改正法案が2017年4月14日、衆議院本会議で可決された。
債権分野の現行法は1896(明治29)年の制定後、ほとんど実質的な見直しがされることがなかった。インターネット取引の拡大などを受けて、消費者の利益を一方的に害する約款条項は無効にするなど、消費者保護のための規定も盛り込まれた。
ツケ払いも5年間、請求できる!
じつに、約120年ぶりの実質改正だ。これまで、お金の支払い請求の時効は、たとえば個人がお金を貸し借りした場合は「10年」であるのに対し、飲食店での「ツケ払い」や宿泊代は「1年」、医師の診療報酬は「3年」などと、業種によって短期の消滅時効が定められていた。
これを、権利を行使することができることを知った時から「5年」(かつ、権利を行使することができる時から10年)に統一。消滅時効が成立するまでの期間が短縮されるとともに、業種による「短期消滅時効」が廃止される。
また、契約書で利率を定めない場合に適用される法定利率が5%から3%に変更。市場の金利に合わせて3年ごとに見直す変動型になる。
このほか、事業のための借入れ時に個人が保証人となる場合、保証人が事前に公正証書を作成して保証する意思を表示しないと、保証は無効。また、事業のための借入れをする債務者が保証人に保証を依頼するときは、自らの財産・収支状況などを保証人に情報提供しなければならず、事実と異なる情報提供があった場合には保証人は保証契約を取り消せる場合がある。
賃貸の場合の敷金は、それを返還すべき要件や時期が明文化される。
西村あさひ法律事務所の高木弘明弁護士は、「改正内容の多くは裁判所の判例を通じて、すでにルールが定まっていたもので、実務に混乱が生じる恐れは小さいでしょう。しかし、たとえば賃貸借について、賃貸した物の修繕が必要な場合に賃貸人にそのことを伝えてもなかなか修繕してくれないときは賃借人が自分で修繕することができるとの規定が設けられるなど、日常生活に影響があり得る内容も含まれています」と話している。