4月、世間は新年度に入り、ある会社はフレッシュな新入社員を迎え、またある会社は転職で心機一転リフレッシュしたスタッフを迎えます。いずれにしても、日本では一つの区切りとして、毎年この季節を迎えています。
ビジネスにおいて新年度の始まりは同時に、新たな目標に向けたスタートでもあります。したがい、私的にはこの時期にお目にかかる経営者の皆さまから、目標の設定に関して雑談も含めてあれこれお悩みを聞く季節でもあるのです。
「うーん」...... 社長の答えに思わず唸る
営業紹介などでお付き合いのある工作機械メーカーのN社。宴席で隣に座ったT社長が、新年度を迎えるにあたってこんな話を打ち明けてきました。
「毎年毎年、新年度になるとこの先1年間の目標を提示して新たなスタートを切るわけなんだが、どうも目標に魂が入らないというのか、社員が他人事として考えがちだというのか。目標設定が年々お座なりなセレモニーになりつつあって虚しさが漂っています。どうしたらもっと生きた目標設定になるのでしょうか」
以前から社員の目標に対する意識が低く、T社長はここ数年、全員を集めて年間目標の設定会議を実施しているのだと。会議では、目標数字の提示と何をどこに売ってその目標をめざすのか、また、売って欲しい主力商材と対象のマーケットを併せて指示することで、より具体的なイメージができるように、と目標に加えて手段の共有も図っているといいます。
それでも、皆の目標数字に対する取り組み意欲が見えてこない。宴席ではありましたが、関心を掻き立てられる話題だったので、何がいけないのか少し聞いてみることにしました。まずは目標数字について。ザックリではありながら聞いてみると、実績対比での目標設定が高すぎるのではないかという印象を受けました。
「社長はそもそも、ご自身が掲げた目標は達成できるとお考えですか?」。私がそう尋ねると、「目標は理由あって高めに設定しているので、達成は無理でしょう。もし8割でも達成してくれたら万々歳です」と事も無げに答えました。
「うーん」、私は思わず唸ってしまいました。
そもそも目標を掲げる時点で「達成できないだろう」と思っている目標が、果たして有効な目標と言えるだろうかという疑問が大きく頭をもたげてきたのです。