「不正」かも... 今すぐ仕事から離れなさい(江上剛)

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「会社の中でもダーティワークというか、表に出せない案件を処理する部署に回され、大きなストレスを感じています。だんだん自分の感覚がずれて行くような気がして心配です。気にし過ぎでしょうか」
  • 不正はバレる
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「商売に嘘はない」

   これは大変!

   どんな仕事をしているのかは知らないけれど、東芝みたいに不正会計に手をつけたり、オリンパスや山一證券みたいに「飛ばし」に協力したり、破たんした銀行みたいに不良債権の隠ぺいに知恵を絞ったり、旧第一勧銀みたいに総会屋への利益供与に加担したりしているわけかな。

   「ダーティワーク専門部署」っていったいどんな部署なのか? もしそんな部署が会社にあるのなら、そんな会社、早々にダメになる。

   会社の神様というべき明治の大実業家である渋沢栄一という人がいるけど、彼の著書「論語と算盤」の中によい言葉ある。

   渋沢は、「およそ商売に嘘は無い」と言う。

   そして、「あるものをないといい、ないものをあるというがごとき、純然たる嘘を吐くのは断じてよろしくない。ゆえに正直正銘の商売には機密というようなことは、まずない」「事業上の見解としては、一個人に利益ある仕事よりも、多数社会を益していくのでなければならぬ」と断言している。

   商売に「嘘」があってはいけないんだね。あなたのように表に出せない案件があることは大問題。すぐに会社内のコンプライアンス部署に駆け込むべきだし、それがダメなら監督官庁など外部に通報すべきだ。

 

「上司の指示」なんて言い訳、通用せんよ!

   東芝もオリンパスも、なぜ事件が発覚したかというと、きっかけは内部告発だ。

   内部告発した人は、誰かは分かっていない。分かると、会社内で不利益を被ることになる危険性があるから。今は、法律で内部告発者を保護することになっているけど、なかなか実態はそうではないようだ。だから、事は慎重に進めねばならない。

   しかし、すでにあなたは大きなストレスを感じているようだから、このまま放置していると、いずれ体調を崩すでしょう。そうならないためには、あなたは今以上に感覚をずれさせることしかなくなってしまう。

   そうなると不正を不正と思わなくなり、当たり前のルーティン作業に変わってしまう。それはあなたの脳が不正だと認識するストレスを回避しようとした結果だけど、それが一番、恐ろしい。

   やがて不正はバレる。表沙汰になる。その時、あなたは警察や検察の厳しい取り調べを受け、その結果、逮捕されるかもしれない。そんな例はいっぱいあるし、私も身近で経験した。

   彼らは不正だと気付いていた。しかし、仕事だと割り切って処理していた。法律違反と分かってやっていたんだ。上司の指示だと言っても警察や検察には通用しない。人生を壊された、どうしてあの時、止めなかったのかと後悔しても後の祭り。

   あなた、告発できないなら、それでも仕方がない。でも、それならすぐにその部署の仕事から離れなさい。絶対だよ。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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