2017年度が始まった。入社式では新入社員が緊張した面持ちのなか、社長のメッセージに、熱心に耳を傾けた。
社長からはどんな「お言葉」があったのか――。
ベストセラーの主人公の言葉
ANAホールディングスは、グループ36社で2799人が入社した。新入社員と同様に、2017年4月1日付で就任したばかりの片野坂真哉社長(61)は、
「『誰もが最初は素人だ』という言葉があります。これはベストセラー『海賊と呼ばれた男』の主人公、国岡鐡造の言葉。皆さんには、個性がある。今日、この入社式に臨んだ初心を忘れずに、ANAグループの一員であることの誇りと責任を大切に、まず小さな一歩から確実に歩み始めてください」
と、2016年に映画にもなった小説の言葉で激励した。
大手商社の一角、伊藤忠商事には149人が入社。岡藤正広社長(68)が、「器用貧乏」をテーマに語った。
「言葉の意味は、『なまじ器用なために、あちこちに手を出し、どれも中途半端となって大成しないこと』とあります。『器用な人』というのは、適当なところで努力をやめてしまったりするのであります。一方、不器用な人というのは、『自分は不器用だ』という自覚があるため、できなくても落ち込みません。結果的に器用な人と比べ、諦めない力と継続力で上回り、最終的には不器用な人が大成します」
と話した。
「『不器用』は立派な才能であり、武器となり得る」とし、「皆さんもまずは配属された部署で与えられた仕事にひたすら打ち込み、その道のプロフェッショナルを目指してください」と、エールを送った。
「...... 大企業に入社した方々は勝ち組だなぁ」
日立製作所は、東原敏昭社長(62)が約670人の新入社員に、3つのメッセージを送った。
「1つ目は、皆さん一人ひとりが『明確な目標』をもち、いち早く会社の戦力として成長すること。2つ目は、『日立人』としての誇りと自覚を持ってもらいたいということ。新入社員といえども、一人ひとりが『日立の代表者』です。3つ目は、オンとオフの切り替えをしっかり行うこと。オフの時間をどのように使うかは、皆さん一人ひとり次第です。そこでの気付きが仕事につながることもたくさんあります」。
そのうえで、「日立には、皆さんが思い切りチャレンジできるフィールドがあります。高い志を持って、おおいに挑戦してください」と、鼓舞した。
さまざまな企業で行われた入社式。インターネットの掲示板などには、
「入社式の座席位置が一番前の真ん中よりで社長挨拶の時めっちゃ社長と目が合って気まずかった」
といった入社式を終えた新入社員からの声や、
「...... 大企業に入社した方々は勝ち組だなぁ」
「ほしいのは学力より体力と精神力だぜw 」
「どうせお行儀よく、はい! はい! 言うだけだろっw 」
といった、新入社員への声が寄せられている。
ちなみに、日本生産性本部が発表した2017年の新入社員のタイプは「ポケモンGO」(キャラクター捕獲ゲーム)型。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向があると分析している。
電通に批判の嵐「すげえ建前だな」
一方、2016年に過労死問題で話題になった大手広告代理店の電通は、山本敏博社長(58)が、
「約半年間にわたる報道のとおり、入社を控えた皆さんとそのご家族の方々に多大な心配をお掛けしたことを、とても心苦しく感じています。今日こうして、新たに145名の皆さんが電通というチームに加わったことを大変うれしく思います」
と、新入社員を歓迎したうえで、
「電通という企業における唯一にして最大の財産は『人材』です。改めて、今日から電通で共に仕事をし、共に電通を支え、共に電通の未来を創る仲間として、電通を舞台に、皆さん自身の可能性を大いに広げてください」
などと奮起を促した。
電通の山本社長のこうしたメッセージに、インターネットの掲示板などには、
「人材は奴隷としか思ってない企業が何言ってんだか(苦笑)」
「すげえ建前だな。財産を管理できてませんって言ってるようなもんやん」
「必要なのは(死ぬまで働ける)人材ですw」
といった辛らつな声が寄せられている。
ただ、なかには、
「氷山の一角だからな。うちだって一歩間違えればと思うと他人事じゃないからな」
と、社会人の「先輩」も気持ちを引き締めていた。