没個性は「ジリ貧」経営のはじまり

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銀行の融資先評価と、経営者の社員への評価は似ている

   S社長は2000年に脱サラ起業し、当時仕事で付き合いのあった技術者数人と会社を設立。起業当初は誰にも実績がなく、やみくもな総力戦で技術力を磨き、新たな開発に取り組み、売り込みをかけ、仕事を次々取ってきたのだと言います。

   「当初の5年間はまさに日の出の勢いで、業績を伸ばしていきました。ところがそこから安定成長に入ってしまったのです。常に増収増益でつぶれる心配などありませんが、かと言って初期のような目覚しい伸びもない。悪く言えば倦怠期です。今までその原因が分からずにいたのですが、今日の『日本的金融の排除』の話を聞いて、スタッフの実績を重視した評価と保守的な人事配置に問題があるのかもしれないと、思ったわけです」

   私が少し不思議そうな顔をしていると、S社長はさらに続けました。

「銀行が融資先を評価する姿勢というのが、我々経営者が社員を評価する姿勢にすごく似ている気がするのですよ。社員を実績重視で見る。安全性を優先した人事配置を考える。理にかなっているようでありながら、よくよく考えてみるとものすごく保守的じゃないですか。銀行は信用第一だから止むなく守ってきた保守姿勢かもしれませんけど、結果として没個性で爆発的な成長可能性を全く感じさせない業種になっています。

そんなわけで、『日本的金融の排除』という言葉からは自分に対する批判を感じずにいられないのです」

   と。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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