企業の景況感の先行き見通しが後退している。
日本銀行が2017年4月3日に発表した3月の企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)の3か月後の先行き見通しはプラス11となり、1ポイントとはいえ悪化した。
「自動車」「電気機械」の景況感がよかったワケは...
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、業況が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した割合を引いた指数。3月は、大企業・製造業でプラス12(前回12月調査はプラス10)となり、2四半期(6か月)連続で改善。また、大企業・非製造業のDIはプラス20(同プラス18)となり、2015年9月以来1年半ぶりに改善した。
大企業・製造業のDIは16業種中、12業種で改善。「自動車」が8ポイント改善してプラス18、「電気機械」は6ポイント改善してプラス10となり、円安で輸出が持ち直した効果が表れた。改善幅の最大は「汎用機械」で、11ポイント改善してプラス25だった。
その一方、「石油・石炭製品」は16ポイント悪化してプラス6となり、「紙・パルプ」は8ポイント悪化してプラス3となった。
また、大企業・非製造業では、訪日外国人数の上昇を背景に、宿泊・飲食サービスが8ポイント改善している。
その一方で、3か月後を示す先行きは大企業製造業、非製造業ともに悪化し、さえない。企業が景気に慎重姿勢を示す背景には、「円高」への不安がある。
3月の日銀短観が改善したのは、円安の進展が大きい。足もとで、為替レートに敏感な「自動車」や「電気機械」などの景況感がよかったのはそのためだ。
為替相場の動向は、保護主義的な政策を打ち出している米トランプ政権から引き続き目が離せないし、英国の欧州連合(EU)離脱交渉や今後のフランス大統領選も結果次第で、市場のリスク回避姿勢が強まり、円高に振れる可能性がないとはいえない。
加えて、人手不足も景気の先行きにはマイナス。消費停滞で企業の収益アップが見込めなくなるなか、人手不足とはいえ、賃上げにも歯止めがかかりそう。悪循環に陥る、その淵にいるのかもしれない。