2015年に「空き家対策特別措置法」が施行され、市町村は適正な管理がなされていない空き家を「特定空き家」に指定できるようになった。
特定空き家は、固定資産税の「減額特例」が適用されない。その結果、「空き家を放置すると税金が6倍になる」と思い込んでいる人が多いようだ。
土地の税金には「負担調整措置」がある
実は、土地に対する税金には「負担調整措置」制度がある。負担調整措置は、固定資産税の急激な上昇で、税負担が重くなりすぎないように調整する仕組みだ。
住宅用地の負担調整措置については、 たとえば200平方メートル以下の小規模住宅用地では、固定資産税の評価額(地価公示価格の7割)の6分の1が「本則課税標準額」(本来の課税標準額)とされる。つまり、その土地に住宅が建っていれば6分の1に減額されるわけだ。
この本則課税標準額(A)と前年度の課税標準額(B)を比べて、B ÷ Aが100%を超えるようなら、Aに引き下げるなどの負担を調整して課税標準額を決める。その課税標準額に税率を掛けて税額を算出する。
また、200平方メートルを超える住宅用地は、超えた部分が一般住宅用地として3分の1に減額される。都市計画税は、200平方メートル以下が3分の1に、200平方メートル超の部分が3分の2に減額される。
一方、家屋を取り壊して更地にすると、商業地と同じ「非住宅用地」扱いとなる。
非住宅用地では、地価公示価格の7割が固定資産税の評価額とされるのは住宅用地と同じだが、それがそのまま本則課税標準額とされ、その額の7割を上限として負担調整されて課税標準額が決まる。
たとえば、面積が150平方メートル、固定資産税価格が1平方メートルあたり120万円、課税標準額が上限の住宅用地(市街化区域内)の場合、小規模住宅用地なので、固定資産税は120万円×6分の1×1.4%(標準税率)=2800円。都市計画税は120万円×3分の1×0.3%(制限税率)=1200円で、合計4000円となる。
この住宅用地の家屋を取り壊して更地にすると「非住宅用地」になるので、固定資産税と都市計画税の合計額は120万円×0.7×(1.4+0.3)%=約1万4200円となる。
これを減額された場合と比べると、1万4200円÷4000円=約3.6倍にのぼる。つまり、通常であれば、「税金が6倍」にはならない。