政府が旗を振る「働き方改革」が前進。長時間労働の是正に向けて、繁忙期などには残業時間が年間720時間を超えないことを前提に、休日を含めて月間最大100時間未満、2か月から6か月のいずれの期間の平均も80時間を上限とするなどの規制をまとめた。
しかし、「過労死ライン」の残業80時間をはるかに超える上限に対する不満の声は多く、広告大手の電通の新入社員で過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母・幸美さん(54)も2017年3月28日、「過労死をさせよ!と認める法案でしょうか」と、反対するコメントを出した。
「妥当」が43%と最多
労働基準法は、労働時間を1日8時間・週40時間と決めている。企業がこの時間を超えて労働者を働かせる場合は、労使で「36(サブロク)協定」を結ぶ必要があり、さらに厚生労働省の告示で「原則月45時間、年360時間まで」と定めている。
ただ、労使で「特別条項」を結んでいれば、事実上残業時間に上限がなくなる。つまり、「青天井」で残業できるわけだ。
「残業が当たり前」になってしまったり、なかには「36協定」がないのに残業を強いていたりする会社は少なくなく、こうした「慣行」が長時間労働の温床になっているとして、政府が改善策を検討。それが、ようやく決着した。
そうしたなか、話題になっているのが日本経済新聞(2017年3月27日付)の世論調査(対象は18歳以上。943件の回答)だ。
残業時間の上限を月間100時間未満とする方針について、「妥当」が43%と最多で、「もっと長いほうがよい」と回答した人が11%。「もっと短いほうがよい」は37%、「いえない・わからない」が9%だった。
男女別では、男性は「妥当」が48%で「もっと短いほうがよい」の33%を上回ったが、女性は「もっと短いほうがよい」が42%で「妥当」の37%より多かった。
「やらなきゃならん仕事が多いのに、どうしたらいいのさ」
この調査結果に、ツイッターでは「100時間妥当は4割、もっと長い方がよいが1割」という数字が取り上げられ、驚きの声があがっている。
「残業100時間が妥当は頭いかれてんだろ 毎日4時間の残業を完全週休二日で1か月やっても足りねぇ」
「電通過労死の問題があれだけ社会的に大問題になったことから考えて、にわかには信じがたい調査結果です。現役世代じゃない人が『もっと働け』と答えてるんですかね?」
「回答者は一体どんな人達?過労死基準の80時間超えがOKとは...過労死したいのか?自分の人生より会社が大事?」
「ホントに? 経営者に聞いてない?」
など、「信じられない」と考える人が多いようだ。
その一方で、「妥当」と回答した人に対して、
「経営陣が『仕事を減らす』ことをせずに、『国からのお達しだから残業減らせ』って言ったところで、下っ端としては『やらなきゃならん仕事が多いのに、残業はするなって言われてもどうしたら良いのさ』ってだけで。『残業100時間が妥当』と言ってる人は、そういう心理じゃないかなー」
と、理解を示そうとする書き込みもみられた。
ちなみに労働基準法改正案では、上限が最大100時間となるのは繁忙月のみ。基本は月平均60時間で、繁忙月以外の月で短くなるよう調整し、年間720時間は絶対厳守させる方針という。(MM)