「書けるネタ」でも、これはボツ【エントリーシート7】

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   エントリーシートを書くとき、稀に「自分は勝ち組」と喜ぶ学生がいます。

   それは、ちょっと変わった経験をしている学生のこと。海外インターンシップや大学祭実行委員会の委員長などの大きな組織のトップを務めた、アルバイトの販売コンテストで成績優秀者だった...... そんな学生です。

  • 個性を表現する!
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アートイベントを主催した学生のケース

   多くの学生が「ありきたり」な経験しか書くことがなくて悩んでいるなか、変わった経験をもつ学生は、「いいよな、お前は。書けるネタがあって」―― などと周囲からうらやましがられます。

   それもあってか、本人も本人で、就活には半ば勝った気になることも...... 意気揚々と筆を進めるのでしょうが、いざ、ふたを開けてみると連戦連敗となる学生がいます。一体、何がまずいのか?

   エントリーシートの事例を見てみましょう。テーマは前回と同じ「学生時代に頑張ったこと」「力を注いだこと」です。アートイベントを主催した学生が書きました。

   「最も力を注いだことは、アートイベントの開催である。好きなアーティストと懇意にしているうち、イベントを開催する話となった。そこで私は開催するにあたって、企業数十社にアポイントを取り、企画書を持ち込んで参加をお願いした。

   イベントの構成や参加企業の見せ方などを反響があるように工夫し、アクセスの良い場所の確保、開催資金500万円の確保もコアメンバーの10人で行い、イベントを一から企画した。

   その結果、イベント後に実施したアンケートでは80%以上の人から『アーティストへの好感度が上昇した』と回答した。また、イベントに参加した企業の実店舗に『イベントで気になったから来た』という顧客が数名来店した。この行動力を貴社でも生かすようにしたい」(330字)

   はっきり言って、これはボツ。落ちる典型例といえます。

   学生がイベントを企画し、運営に携わったエピソードは、一見するとユニークに見えます。ところが、この内容、文章構成では前回の食品販売のアルバイト学生とまったく変わりありません。つまり、「ありきたり」なのです。理由はこれしかありません。

   この学生が一生懸命に書いたことは、イベントの概要など「背景」だけ。前回のとおり、「背景」を一切書くな、とまでは言いませんが、学生自身の話がないのですから、企業側は判断のしようがありません。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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