日米の株式市場は、米トランプ大統領の一言で膨らんだりしぼんだりを繰り返す。日経平均株価は1万9000円を挟んで売り買いが交錯。2017年の、機関投資家による期末の決算対策売りは例年より早めに進んだようにみえる。
そうしたなか、医薬品は高齢化社会の到来で市場の拡大が続く。その半面、医療費を抑制するための後発薬の優遇政策や薬価の引き下げがのしかかり、製薬会社は「逆風」の状況にある。
新薬と診断薬の一体開発は世界の潮流
世界の製薬業界をみると、2015年の医療用薬品の売上高は、ロシュ(スイス)、ノバルティス(スイス)、ファイザー(米国)がともに売上高5兆円台。これに4兆円台のメルク(米国)、サノフィ(フランス)が続く。日本の最大手、武田薬品工業は1兆8000億円で世界17位前後だ。
一方、日本の製薬会社の売り上げは、大手5社(武田薬品、アステラス製薬、第一三共、大塚ホールデヂィングス、エーザイ)を足して、5兆6861億円。日本の製薬会社が束になって、ようやく世界第1位のロシュ(5兆3440億円)並みという状況にある(会社四季報 業界地図 2017年版)。
会社四季報 業界地図の現状解説によると、「新薬開発は成功確率が約3万分の1という宝くじのような世界で、難易度は年々上昇」しているという。そのうえ、「作りやすい薬はすでに開発し尽されており、各社はがんや認知症のような難易度が高い領域や、患者数が少ない希少疾病薬の開発に挑むしかない。必然的に、研究開発費も膨張傾向にある」と指摘する。
さらに、「大企業同士の合併でメガファーマが誕生した1990年代後半には規模拡大による研究開発費の確保が志向されたが、現在は強い事業を増強し弱い事業を捨てる、事業単位の再編が目立つ」という。
そうしたなか、アステラス製薬は「診断薬」の開発に乗り出す。日本経済新聞(2016年8月16日付)は、「アステラスは血液癌の一つ、『急性骨髄白血病』の新薬を開発するのと並行して、米診断薬メーカーと診断薬を共同開発する。アステラスが主導して新薬と診断薬を一体開発する初のケースになる。診断薬があれば、これまで効用がはっきりしなかった新薬の服用を避けることができるようになり、副作用リスクを減らすことができるほか、新薬購入の費用を減らせる。診断薬が普及すれば、薬剤費の一部や大半を社会保障費で負担する各国の財政にも寄与する」と報じた。
診断薬をめぐっては、海外勢も「免疫チェック阻害薬」と呼ばれる新たな抗がん剤でロシュやメルクなどが米国で診断薬との一体開発を進めるなど、ライバル同士が手を結ぶまでに至っているとされる。国内でも、新薬と診断薬の一体開発をにらんだ業務提携が本格化する可能性がないとはいえない。