上場目前に起きた反乱
そんな折も折、私が同席していた会議で、社長から次々と新たな指示が出され、その中で追い打ちをかけるようにM部長に厳しい叱責、指示が投げかけられました。「採用コストが高い! 君は上場の足を引っ張る気か。定着率をすぐに上げろ! 」。険悪なムードを察知し、私が口をはさもうとしたとき、事件は起きました。
「二言目には上場、上場と無理難題ばかり。もうやってられません! 私は降ります。長い間お世話になりました」と、M部長がいきなりぶち切れたのです。これには全員が唖然。何より創業から黙ってついて来たイエスマンの反乱に、F社長は言葉を失いました。
結局、M部長を失っては会社が立ち行かないと悟った社長は思案の末、方針を大幅変更し上場計画も一たん取り下げました。M部長は社長の方針転換をもっての説得により、退職を思いとどまり今に至っています。
会社は過去ほどの急成長にはないものの、「ほどよいワンマン経営」に移行。幹部社員からも経営方針に関する意見が出されるようになり、順調に業容を拡大しています。
ソニンさんのエピソードに見るところの「イエスマン=指示待ち人間」の限界点は、突然訪れるのです。イエスマンばかりで「一人天下」の経営者は、部下に対する要求に行き過ぎがないか、自己チェックが常に必要なのです。突然の破たんリスクがそこに存在するということをお忘れなく。
元アイドルの指示待ち体験談から、意外な気づきを得た一件でした。