「40歳をいくつか過ぎて、漠然とした焦りを感じます。どのように気持ちを落ち着かせればよいのでしょうか」
あなたの問いは、深すぎて答えはないね。無理だと一言で片づけたいところだけど、そう言うと身も蓋もない。
いくつになっても「不安」だらけ
漠然とした焦り、それは不安なのだけど、60歳をいくつか過ぎた私も感じる。捉えようのない焦り、不安。人生の終わりが近づいてきたせいなのか。あまりにいろいろなものを持ち過ぎたのか。
無為自然を唱えた中国の古代の聖人、老子は「無為を為し、無事を事とし、無味を味わう」と言っている。
とにかく何もしない何もないのが一番だというんだね。
これは本当のこと。
あなたも40歳を過ぎたのなら、妻も子供もいるでしょう。自分のことも気になるけど、妻や子のことも気になる。子のことは妻のことよりずっと気になるかもしれない。子の成績が良ければ、良いで不安。デキが悪けりゃ悪いでもっと不安。
こうなると妻も子もいない人が羨ましいだろうね。心配事がそれだけないのだから。でも妻や子がいない人は、この先もずっと一人で寂しい老後を過ごすのかと想像するだけで不安になる。
また、あなたがお金持ちだったら、減らないか、取られないかと不安になる。貧しいなら、明日は飢え死にするかもしれないと不安になる。
人間に生まれた以上、この漠然とした焦り、すなわち不安からは逃れようがない。だから仏陀も悟りを求めて王宮を出た。
人間には想像力という力がある。これは無い物を想像する、有る物のように想像する力だ。よくは分からないけど、人間だけの固有の力じゃないかな。