ありきたりなバイトネタでも「勝てる」!【エントリーシート6】

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   学生時代に頑張ったことは何でしょう――。

   そう聞かれると、学生の大半が大学の勉強やゼミ、サークル、アルバイトと答えるのではないでしょうか。あとは資格取得の勉強や教育実習、海外留学や旅行、ボランティア、趣味などでしょうか。どのネタをエントリーシート(ES)に書くか、その際に必ず出てくるのが採用担当者の「ありきたり」批判です。

  • 「ありきたり批判」 どうすればいい?
    「ありきたり批判」 どうすればいい?
  • 「ありきたり批判」 どうすればいい?

「ありきたり批判」で書くネタがない...

   「ありきたり批判」...... 要するに、アルバイトやサークルの話をつらつらと書いても、おもしろくもなんともない、「ありきたり」ということです。

   私も取材していると、採用担当者から、こんな話をよく聞きます。

「今日はマクドナルドが3人続いた」
「うちは、エントリーシートを読むと飲食チェーンが全部そろう」

などなど。

   そんな批判を耳にするからか、学生は少しでも変わったネタを書けば採用されやすい、変わったネタでなければ採用されにくい、と勘違いしてしまうようです。

   その一方で、

「普通の話を書けばちゃんと採用される」

との意見も根強くあります。いったい、どうすればいいのでしょう?

   さっそく、ESの「ありきたり批判」を浴びそうな事例を見てみましょう。テーマは「学生時代に頑張ったこと」。書いてきた内容は、デパート地下での食品販売です。

「大学生活において最も力を注いだことは、デパート地下の惣菜売り場でのアルバイトです。店頭でのお客様の呼び込みや、サラダやフライの量り売り販売を行っています。ある日、年配のお客様に接客していた際、接客態度が悪いと面と向かって怒られてしまいました。その日は朝7時半から夜8時まで1日を通して働いており、夕方頃には疲れてそのお客様への接客が適当になっていたことが原因だと思いました。それまで接客態度を注意されたことは一度もなく、私はそのお客様の言葉にハッとさせられました。
 商品だけでなく、店員の接客、店の雰囲気すべてがお客様の満足度に繋がっているのだと気づきました。その後は、たとえ疲れている時でも笑顔で接客するように心がけました。またそれに加え、商品の味の説明、試食を進んで行うなどといった販売方法を工夫することで、お客様に『商品を買いたい』と感じてもらえるような接客を心がけました。
疲れていても心を込めて笑顔で接客、販売方法の工夫を日々実践していくことで、以前よりもお客様に『ありがとう』『また来るね』と声をかけられることが増えました。この経験を通して、私は常に相手の気持ちを考えて人と接することができるようになりました。(491字)」

   さて、結果は......

行動、意識を書く!

   採用担当者から見て、この学生の事例は「ありきたり」で落としやすいように思えます。たしかに、このままではおもしろくもなんともありませんし、印象に残りません。なぜでしょう?

   注目してほしいのは、文章の構成です。何が「ありきたり」にしているか、と言えば、学生自身の話が不在なことです。

   学生からすれば、自身の話を一生懸命書いたつもりかもしれませんが、書いてあることはアルバイトの業務内容などの「背景」です。「背景を一切書くな」とは言いませんが、商品の味の説明や試食などが食品販売の仕事であることは、わざわざ書かなくても誰でもわかります。背景説明も少しは必要ですが、そればかりで肝心な要点、つまり採用担当者が知りたい、学生自身の話が抜けていては判断のしようがありません。

   採用担当者は「学生本人の普通の話でいい」と言います。しかし、一方で普通の話を書いても、今度は「ありきたり」と言われる。学生からすれば頭を抱えてしまいますが、よくよく文章を分析すると、「背景」を書きすぎていることが見えてきました。

   では、「背景」を薄めて何を書けばいいのでしょうか。まずは先ほどのESの修正後を見てみましょう。

「デパート地下の惣菜売り場でのアルバイトです。店頭でのお客様の呼び込みや、サラダやフライの量り売り販売を行っています。
ある日、年配のお客様に接客していた際、接客態度が悪いと面と向かって怒られてしまいました。その日は朝から夜まで1日を通して働いていました。そのため、夕方頃には疲れてそのお客様への接客が適当になっていたことが原因です。それまで接客態度を注意されたことは一度もなく、私はそのお客様の言葉にハッとさせられました。
その後は疲れている時でも、意識して笑顔をつくるようにしました。もちろん、疲れるときはいくらでもあります。そんなときは、お客様にとって、その日、初めて私と接するのだから、と考えます。疲れた顔をお見せするのは、いくらアルバイトと言ってもお給料をいただいている以上は不適当です。今はオンとオフの切り替えを強く意識しながら働いています。(374字)」

   業務内容など「背景」はできるだけ分量を減らしました。一方で増やしたのが、学生の行動(過程)であり、意識やこだわりです。この事例では、「オンオフの切り替え」などの意識を中心に置きました。これだと、まだ学生の姿が見えてきます。

   このように、学生自身の話を書いていけば、エントリーシートは「ありきたり批判」にならず、変わっていくのではないでしょうか。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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