決算発表の延期を繰り返す東芝の不適切会計に注目が集まるなか、全上場企業を対象に行った調査でも、不適切会計が増えている実態が明らかになった。
東京商工リサーチによると、不適切会計の開示企業は57社(件数ベースで58件)で、前年の52社(53件)を、会社数で5社(9.6%)、件数で5件(9.4%)上回った(2017年3月15日発表)。不適切会計の開示企業数は2013年から4年連続で増加をたどり、社数・件数とも調査を開始した2008年以降の最多記録を更新した。
コンプライアンス意識の欠如、監査体制の強化が原因?
この調査は08年に始まった。当時、不適切会計を開示した企業は25社(25件)に過ぎなかったが、2016年は57社(58件)と2.2倍に急増した。
なかでも、東証1部上場の大企業の増加ぶりが目立つ。株式市場別でみると、東証1部は27社(28件)で最多。15年に不適切会計が発覚した東芝でも1件、東芝テックは1社で2件あった。
2013年までは新興市場のジャスダック、マザーズが目立ったが、15年以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部の増加が目立つ。
また、業種別でみると「製造業」の15社(16件)が最多。「運輸・情報通信業」の10社(10件)が続いた。
不適切会計が急増する背景には、コンプライアンス意識の欠如や従業員への過度なノルマ追求、業績至上主義といった健全な会計意識の定着遅れが温床となっているほか、監査体制の強化など、厳格な運用が求められる企業会計についていけず、処理の誤りが生じたケースも散見された。
金融庁と東京証券取引所は15年5月の東芝の不適切会計の発覚をきっかけに、上場企業が守るべき行動規範の策定を進め、「コーポレートガバナンス・コード」を公表。企業などに、開示資料の信頼性確保やガバナンスの強化を求めている。
不適切会計を内容別に見ると、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が25件で最多。次いで、「売上の過大計上」や「費用の繰り延べ」など、営業ノルマ達成を推測させる「粉飾」が24件あった。「粉飾」では、子会社や関係会社間での売り上げの過大計上や売上原価の先送りなど、業績目標を達成するために意図的に操作されたケースもある。
経済のグローバル化で事業規模が拡大。海外子会社を通じた取引での不適切会計も増えている。