『知識ゼロからの小さな会社の始め方』 アディーレ会計事務所/アディーレ法律事務所 幻冬舎 税別1300円
弁護士法人のアディーレ法律事務所と、その税理士法人のアディーレ会計事務所が、漫画と図解を駆使して、「起業」までの道のりをわかりやすく解説した一冊。
いつかは自分の強みや得意分野を生かして、独り立ちしたい。雇われる立場よりも、会社を立ち上げてみたい。働くうちに「起業」という考えが頭をかすめたことがあるビジネスパーソンは少なくないのではないか。
一から勉強しようという人にもわかりやすい
しかし、いざ事業を始めるとなると、「好き」や「勢い」だけでは難しい。2006年に施行された新会社法では、制度上は「資本金1円」で会社を設立できるが、融資や信用の面でマイナスの評価となるため、事実上会社として機能しないのが現実だ。
では、いったいどんな手続きや資金が必要になるのか──。それを教えてくれるのが、この『知識ゼロからの小さな会社の始め方』だ。
事業計画の立て方などをレクチャーする「経営計画編」、資金調達などについて知る「資金計画編」。登記の流れをまとめた「設立手続き、届け出編」。会社運営のコツをつかむ「設立当初にやること編」。帳簿や決算書などについて学ぶ「経営マネジメント編」の5章に、起業から会社運営に必要なノウハウが凝縮されている。
「知識ゼロから」とうたっているだけあり、親しみやすい漫画と図解がふんだんに使われたページは、一から勉強しようという人にもわかりやすい
。会社設立にかかるお金は? 権利関係は???
読み進めていくと、「株式会社の設立にかかる費用は約25万円」「個人事業から会社設立に移行するメリット」や、最近話題になった日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料問題にも関連する「自分で買ったCDを店舗のBGMとして流すのは違法?」など、雑学としても使えそうな知識を得られる。
交際費や旅費交通費など経費についての定義も書かれているため、今すぐ起業の予定がない会社員でも一読しておくと役に立ちそうだ。
巻末には起業・経営に関する推薦サイトや相談窓口、困った時に手を借りるべき専門家についても掲載されており、かゆいところに手が届くような親切さがありがたい。
会社に勤めながら、自身のアイデアを事業化したい。でも、忙しくて勉強する時間すらないというビジネスパーソンはいるはず。起業への夢を形にしてくれる、この一冊を読んでおきたい。