「数字を使えば具体的」の具体的な話 【エントリーシート5】

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具体的でない数字の具体例

   もう少し、他の学生の例を見てみましょう。

【数字の具体例2】 「私はテニス部所属です。大会で上位に進出するために1日5時間は練習をするようにしました。その結果、大会では3位に入ることができました」

   こちらも、具体例1と同じ。具体的なようにみえますが、実は具体的ではありません。

   体育会系の学生が陥りやすいパターンで、練習時間が5時間だった、6時間だった、何時間だった、と書くわけです。それはいいのですが、体育会系なら、練習はするのが当たり前。5時間というのがすごいかどうか、大変なものなのかどうかはよくわかりませんし、伝わってきません。

   「大会」も何の大会なのか。いや、大会名を書けばいい、というものではないですよ。テニスを知らない人でもわかる大会ならいいですが、そこに上位進出をする学生などそうそういません。と言って、マイナーな大会や予選を出されても、それはそれで検証できませんし、3位と言われても、出場者4人の大会もありますから、単なる「盛り」ではないか、と言われかねません

   また、こんな事例もあります。

【数字の具体例 3】 「私は大学祭実行委員会で文化人講演を担当しました。様々な努力をした結果、入場者数は300人、前年度から1.5倍増やすことができました」

   これは、大学祭実行委員会の学生が書きたがるネタ。これも具体的なように見えますが、まったくわかりません。文化人講演であれば、講演者の知名度などで人数はいくらでも上下します。大学の規模を考えれば、1000人の来場者がいてもおかしくないかもしれませんし、その逆かもしれません。

   それを「300人」「1.5倍」という数字を出されても、これはこれで検証不可能で、評価しようがないのです。 つまり、数字を出せば具体的になる、とするマニュアルは、実は眉唾もの。むしろ、具体的ではない、というリスクが伴うのです。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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