バブル崩壊後の「失われた20年」を経て、日本経済もそろそろデフレ脱却する時期ではないかと考え、ここ数年は今後予測されるインフレに対応する銘柄のウエートを大きくしてきた。
その一つが、証券最大手の野村ホールディングス(HD)。2017年3月10日現在、4800株を保有。平均取得単価は712円。景気の拡大場面で、最初に恩恵を享受するのが証券株だからだ。
損失計上するも、「転んでもタダでは起きない」
野村HD株を初めて購入したのは、2007年4月26日。2324円47銭で100株(取得額23万2450円)を購入した。このときの日経平均株価は1万7446円を下回っており、野村HD株の年初来高値は2870円、安値は2205円だった。
野村HD株は2000年2月9日には100株、35万1000円の高値を付けていた。それが23万2450円(66.2%)まで下がっていたので、買いごろと判断した。当時の日本経済は「デフレ」が漂っていたが、メガバンクに資本注入されていた公的資金が2006年度には完済され、「バブルの処理にメドがついた」とみていたこともある。
ところが、2008年にリーマン・ショック。翌09年にはギリシャの債務問題などで欧州危機が深刻化して、日経平均株価は連日値下がり。欧州危機の再燃を警戒した投資家が株式の持ち高を縮小した2011年11月24日には、とうとう8200円を割った。
野村HD株を最安値で買ったのは、その1か月後の12月26日で、1株256円37銭。その後もナンピン買い(平均取得価格を下げるために買い増しすること)を続けたことで、保有した野村HD株は3900株(平均取得単価10万9000円)になっていた。
とはいえ、ナンピン買いを続けたものの、一向に株価は上がらず。かえって損失を抱えてしまった。折しも株式の譲渡益課税が2014年1月から、10%から20%に変更されることが決まっていた。そこで、税制が変わる2013年末までにできるだけ売却損を出せるものは出そうと考え、野村HD株を売って、損失の繰越控除を使った節税に狙いを切り替えた。
2013年2月に確定申告した12年分の譲渡損失繰越控除は92万1952円の損失。このうち、48万円分が野村HD株の売却損だった。
株価が値下がりするなか、2013年には保有していた野村HD株をさらに3100株売り、4000株を低価格で買戻すことで、平均取得単価を1024円72銭から881円52銭まで下げた。
その一方で、2013年11月には三井不動産1000株を3275円で売却。223万5000円の売却益(取得価格1040円、売却価格3275円)を手にした。それにより2013年分の確定申告は、本来127万2682円の譲渡益を計上すべきところを、前年に92万1952円の損失を計上していたので、その分を差し引いた損益通算で35万730円の利益を計上するだけで済んだ。
2012年のマイナス申告(92万円の損失)がなければ、譲渡益は127万円となり課税額は12万7000円(当時の税率は10%)になっていた。つまり、確定申告で9万2000円の節税になったというわけだ。
ちなみに、株式の譲渡損失の繰り越し控除は3年間有効。確定申告をしておけば、その年のマイナス分を向こう3年の利益と相殺できる。