コーチングは教えちゃいけない 「厳しい指導」もやめなさい!

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「気づける人」の生産性は高い

   ポイントは、質問に答えることで問いかけられた側が教わったこと、指示されたことではなく、自ら発想した事柄を口にすることにあります。前回のY社長も問いかけに対して自ら発した言葉から気づきを得て、思わずカッと来たときに怒りの矛先を爆発させることなく収める手立てを思いついた、ということなのでしょう。

   少し前の話ですが、知り合いのコーチング・コンサルティング会社のW社長が、コーチングの本場アメリカから入手した調査データとして大変興味深いものを見せてくれました。

   「やらされ感でやる仕事の生産性を1とすると、仕事の意味や意義を理解して取り組むと生産性は 1.3 倍になり、さらに自ら企画を考える段階から参画すると 1.3 の2乗になって1.69倍になる」。端的にいうと、「人から言われるまま取り組むことより、内容を理解してやること、さらに自分で思いつき自分で決めたことは明らかに生産性が上がる」ということです。

   だからこそ、自分の言葉でやるべきことを発し気づきを得るコーチングには、ティーチングでは得られない大きな効果があるのだと、W社長は力説していました。

   そんな話を思い出した折にお目にかかった、クライアント先のT社長。彼とはかれこれ10年以上の長い付き合いなのですが、毎度毎度口をついて出るのは、「うちの幹部社員ときたら、毎度毎度同じことをキツく言っても本気で聞いてやしない」という台詞です。

   ちょうどその日も、「また昨日、私から何度言われても言われている通りにやらないから、大切な取引先からクレームをもらうことになった」と嘆いていました。

   そこで、私は「コーチングをご存知ですか?」と切り出して、W社長から聞いた話を引き合いにして説明して差し上げました。

   するとT社長は、

「じゃ、毎度同じことを言う代わりにどうすればいいんだい?」

と。

「とりあえず何か問題が起きた時に、文句や口うるさい指導をせずに、『どうすればよかったと思う?』と質問してみてください。それに対して自分の口から『こうするべきでした』と言わせたらしめたもの。次からは少し変わると思いますよ」

と答えました。

   社長の表情はやや疑心暗鬼でしたが、その日はそこまでにしました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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