経営者こそ「怒り」リスク負う 知っておきたい「6秒ルール」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

社長が身に付けた自制の方法とは

   さて、しばしの休養を経て職場復帰されたY社長が、休養後は一転、至って穏やかな物腰に変わったという噂を聞きつけ、「もしや出家?」と表敬訪問すると、

「知り合いに紹介されコーチングというものを始め、気づきをもらいました。相手に当事者意識が欠けている状況で、私ばかりが一方的に当事者になりすぎるから『怒り』になるのだと。それ以来、たとえカチンと来ても当事者にならず状況を俯瞰して、第三者的に心の中で実況することにしたのです。例えば、部下に頼んだ仕事が締切日になっても報告がないというときには、『もしや、この仕事の優先度の高さを部下は理解していないのか。社長はそっと尋ねてみた......』、という具合に。映画のニヒルな主人公になったみたいで、気分も悪くない」

   冒頭に紹介したアンガー・マネジメントの専門家によれば、「怒り」をコントロールする最大のポイントはカチンときてから最初の6秒の自制にあるそうです。カチンときた途端、急激にアドレナリンが出ますが、それがピークに達する6秒をやり過ごせば「怒り」は徐々に引いていき冷静さを取り戻すのだそうです。「怒りの6秒ルール」。Y社長は健康維持という必要に迫られて、自然とその「6秒ルール」を身に付けたようでした。

「部下とのコミュニケーション量が圧倒的に増えました。皆も意見をたくさん言うようになりました。私の『怒り』が、いろいろ邪魔をしていたのかと反省しきりです。酒を飲んで人間関係を損なっていた先輩が、酒をやめて人生が180度変わったと言っていましたが、私にとっての『怒り』がいかに悪であったか、実感しています」

   経営者は経営者であるゆえに、ついカッとなって「怒り」をあらわにしがちです。しかし、経営者である以上、自分の「怒り」が経営面にマイナスを生んでいないか、という観点で冷静に考えてみることも必要なのではないでしょうか。

   アンガー・マネジメントは、影響力を持った「怒り」を表に出しがちなオーナー経営者にこそ知ってほしい知識であると思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
姉妹サイト