このところ気になっていたアンガー・マネジメントのお話を、知り合いの専門家から詳しくうかがう機会を得ました。
プロスポーツ界ではすでに常識
人の感情の中で最も強い「怒り」。それを正しくコントロールするアンガー・マネジメントを身に付けることは、アメリカのプロスポーツ界では常識になっているといいます。これまでの私の理解では、「怒り」はプレー中の暴力的な行為を生み、暴力的な行為はファンの心を離れさせ選手生命を短くし、さらにチームの存続をも脅かしかねない、だから正しく管理されるべき、というものでしたが、どうやら正確にはもうひとくだりあるようでした。
「ポジティブな精神状態では人の視野は広がり、全体状況を踏まえて的確な判断に基づく行動ができるものの、ネガティブな精神状態では一転視野は狭くなり、ごく限られた部分に視野は狭められ、冷静な判断力を失って誤った行動に出がちである」。アメリカの心理学者ショーン・エイカー氏は、実験に基づく理論をまとめた著作の中でこう述べています。「怒り」という一種のネガティブな精神状態についても、同様のことがいえるということです。
確かにスポーツ中継を見ていると、エイカー氏の理論を地で行くような場面をよく目にします。例えば優勢劣勢が拮抗したサッカーの試合で、相手の挑発的ラフプレーから精神状態をかく乱され、突然守備が乱れて点を奪われてしまうシーン。2016年のプロ野球日本シリーズでは、死球を与え打者の怒りを買い自らも冷静さを失った投手が、騒ぎと距離をおいて集中した次打者に決勝本塁打を浴びるというシーンもありました。
ワンプレーごとの戦略的なゲーム運びが試合の帰趨を決するアメリカンフットボールで、特にアンガー・マネジメントが重用されているという理由が分かる気がします。
「怒り」が思考の視野を狭めコミュニケーションを遮断して誤った判断に導く。企業経営者には聞き捨てならない話です。