考える力は母語が基礎になる
世界の人々とコミュニケーションをとるには英語を学ぶしかありません。英語が事実上のスタンダードになっている事実は今さら変えようがありませんから。
20年前、僕がロンドンに駐在していたとき、北欧の人はみんな英語がぺらぺらでした。それに比べて南欧のイタリアやスペインなどの人はそうでもなかった。それは北欧の人が勤勉で賢く、南欧の人が怠け者だからというのではなく、経済に占める交易の比率が北欧は4割と高く、対する南欧はそれほど高くないという事情があったからです。そういう意味でも、交易立国の日本人は英語を学ばなければならないのです。
ただし、英語さえできればいいと考えるのは愚の骨頂です。なぜなら物事を考える力は、やはり母語が基礎になるからです。文化は母語。まずはしっかりした日本語を身につけることが最優先です。考える力が備わっていなければ、いくら英語ができても、国際人として諸外国の人々と対等にわたり合うことはできないでしょう。(出口治明)