日本が内に閉じこもったままでいられないのは、石油などがなく一国だけでは食べていくことができないからです。海外と仲よくして、多くの国と交易しなければ生き延びられません。
協調路線をとるしかない
アメリカは3億以上の人口を抱え食糧、エネルギー資源も豊富、極論すれば一国でご飯を食べていける国です。中国やロシアもしかりです。ドナルド・トランプ氏が「アメリカ・ファースト」を訴えたり、習近平総書記が中国の国益優先の姿勢をとることができるのも、一国で自活できる大国だからです。アメリカや中国は、一国主義もとれるし、国際協調路線もとれます。しかし、日本は世界の人々と仲よくやっていく協調路線しかとり得ません。
日本でも、排外主義的な言説が声高に叫ばれたり、「やはり日本が一番」といった素朴な国内回帰論が語られたり、内向きの動きが目につきますが、それはおそらく、日本は一国だけでもやっていけると錯覚しているからでしょう。しかし、日本には石油など化石燃料がほとんどありません。日本はこれまで自由貿易というルールの中で国を栄えさせてきましたし、今後も世界の国々に物を売ってもらったり買ってもらったりしながら生きていくしか道がありません。そのためには、人と人との行き来が必要です。多くの友だちを世界中につくらなければなりません。
かつてわが国の製造業は安い人件費などを求めてアジア諸国に工場をつくりました。日本の工場を分解して現地で組み立てなおすような形で立ち上げ、日本人を送り込んで労働者に仕事の仕方を教え、日本と同じやり方で生産するのですから、その国の文化を学んだり人情を理解して人と触れ合ったりする必要はそれほどありませんでした。ストライキなどが発生しないように現地の優秀な人間を高給で雇い入れ、労務管理を任せれば、あとは日本と同じです。それが「工場モデル」のグローバリゼーション。真の意味での国際化とはいえませんでした。
中国人が海外に出るようになったのは比較的新しく、清の時代のことでしたが、彼らは移り住んだ土地に何代にもわたって土着することで国際人になっていきました。さらに、それぞれを結ぶ華僑のネットワークを築きました。
日本人もグローバリゼーションの中で頑張っていこうとするなら、多少無理をしてでも若者を海外に送り出し、それぞれの国の習慣を学び、現地の人と交流を深めるようにし向けなければなりません。そうやって国際化を牽引する人材をつくる必要があります。わが国は、「ジャパン・ファースト」の姿勢などとり得ないことは責任ある大人がしっかり教えるべきでしょう。