「してあげたこと」は多いが
この「相手の貢献よりも自分の努力を高く評価しがち」という人間の性向は、心理学でいうところの「責任のバイアス」というものにあたります。実験でも、付き合っているカップルのそれぞれに、お互いが「してあげた/してもらった」具体的な貢献を挙げさせたところ、平均して、自分が相手にしてあげたことは約11個書けるが、相手が自分にしてくれたことは約8個しか書けないという結果が出ています。
自分の相手に対する貢献度を意識する前に、相手の自分に対する貢献ポイントを見つけて感謝の意を伝える。世のリーダー方には、簡単にできて必ず役に立つ組織活性化、人間関係活性化の秘策となること請け合いかと思います。この話を思い出させてくれた栗山監督のリーダーとしての人事掌握術にも、この要素が含まれています。選手もスタッフも監督の著書を読んで、「今年も監督を胴上げできるように頑張ろう」と心から思うはずです。
残念ながらM取締役は、その後健康を害されて志半ばにして退任されたと聞きましたが、Oさんは順調にキャリアを重ねて、現在は都内の大店の支店長をされているそうです。今もM取締役の教えを守って、師の後を継ぐ人望厚いバンカーとなっているにちがいないと思っています。(大関暁夫)