48年前の悩みもやっぱりこれ メンタルヘルス不朽のテーマは

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進歩しない「人と人の感情」

   それから半世紀近くを経て、メンタルヘルスケアは「ストレスチェック義務化」により、企業が必ずやらなければならないものになりました。

   2012年の厚生労働省「労働者健康状況調査」を見ると、働く人の60.9%が「強い不安、悩み、ストレスがある」と答えています。その内容を3つ以内の複数回答で聞くと、「職場の人間関係」が41.3%でトップでした。続いて「仕事の質」が33.1%、「仕事の量」が30.3%でした。

   48年前の調査対象は現場マネジャー、厚生労働省の2012年調査は一般社員という違いはありますが、いずれも悩みのトップが「人間関係」であることに変わりありません。

   私は日本で最も早い時期からメンタルヘルスの仕事に携わり、以来40年以上になります。働く人びとのメンタルヘルス不全が増加していくのを、肌で感じてきました。実際に、ストレスなどが原因の精神障害による労災請求件数は最多となっています。

   私たちを取り巻くビジネス環境はこの間、大きく変わりました。現在はAIやビッグデータがさらに変化を加速させています。メールやSNSが広く普及し、コミュニケ―ションもリアルタイムで行われるようになりました。

   しかし、変わらないのは「人間関係」でした。

   テクノロジーが劇的に進歩しても、交流する「人と人の感情」は進歩しません。うまく人間関係を保つことは、メンタルヘルスの基本です。

   48年前も今も、仕事における成功の要諦は「良好な人間関係を作ること」。それだけは変わらないようです。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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