ストレスチェックの義務化が始まって以来、管理職に求められる安全配慮の比重は増加しています。義務化の背景には、仕事や仕事をめぐる環境において強いストレスを感じる人が昔より多くなっているという事情があります。
歴史を振り返ると、日本の民間機関で、メンタルヘルスを健康管理と切り離し専門的な対処を開始したのは1968年、私がカウンセラーに従事していた日本鋼管病院精神衛生室でした。
出世に8割が「満足」していた
当時行われた某企業の管理職のメンタルヘルス調査を見てみましょう。
管理職になって、
(1)満足している人は全体の約80%
(2)大変と考えている人は約15%
(3)苦しいという人は約5%
でした。48年前は管理職になるのがすなわち立身出世の「ほまれ」でありました。
駆け出しのカウンセラーだった私が今でも覚えている中年男性からの相談は、次のようなものでした。
「努力しても課長になれないんです」
私が「ならなくてもいいのでは?」と応じると、
「家族が『課長になって給料を上げて』と言うんです......」
人事的には「昇格させたいけどポスト不足で困っている」という時代でした。管理職になりたくてもなれない人がいたのです。