厚労省の作成した資料によると平成26年における「共働き世帯」は1114万世帯、「専業主婦世帯」は687万世帯だったという。いまや「昭和のロールモデル」だった専業主婦よりも、共働きの女性が増えているのは間違いないだろう。
ブランク後の再就職は大変なのに
とはいえ、依然として出産や子育てなどで離職してしまう人が少なくないのもまた事実である。そんな状況に疑問を抱く女性の声が、Q&Aサイト「発言小町」に寄せられた(2017年1月30日)。
「大学まで出たのにどうして専業主婦になってしまうの?」という率直な意見を投稿したのは30歳の女性。地元の国立大学を卒業後、上場企業に内定をもらい、産休・育休をとって、現在は復帰している。確かに仕事と家庭の両立は大変だが、「ブランク後の再就職は大変」と聞き及び、夫婦で協力しながら、仕事と子育て、家事の「三立」を頑張って続けている。
そういう彼女は、多くの女性が妊娠や出産を機に仕事を辞めることに驚きを隠せないのだという。
「せっかく大学まで行って、就活も頑張って入った会社をどうして辞めようと思えるのでしょうか。何の為にお金をかけて大学に入ったのでしょうか?」
と質問を投げかけると、いろいろな立場からの回答が殺到、1週間足らずで200を超えた。
「やめなくていい人がうらやましい」
文面を見る限り大半は女性からのようで、比較的多かったのが「大学は就職予備校ではない」という反発。
「高額な学費を払って大学で専門的知識を身に着けたからといってそれに見合った職業につかなくてはいけないというわけではないし、正社員になったからといって一生働かなくてはいけないという決まりもありません。大学は就職予備校ではない」
「私は勉強したい事がたくさんあったので大学に行き、普通にしていたら出会えない先生の授業をたくさん受けられました。でも仕事は全く関係ないものです。学歴など通用しない仕事です」
「私の最終学歴が専門学校卒だからでしょうか。いつも不思議に思うのが、『大学まで出て専業主婦』『大学まででて○○』ってよく耳にしたりしますけど、大学は『勉強する場所』だと思ったんですが、大学って就職するために行く場所なんですか?」
大学をその後の就業と直結して考えるのがそもそもおかしいという立場だ。
また、「働きたくても働けない」「人それぞれ事情がある」「それが分からないのは視野が狭いから」という意見も。
「配偶者によります。働きたいが、転勤が多くて定職につけない。子供が生まれたら家にいてほしい、働いても家事は協力しないと夫がいう...とかね。本当は働きたいけど、できない理由があるので、もう諦めている人も多いかも。主婦をやりながら、働きたくてもうずうずしている人も多いんじゃないでしょうか」
「一部上場企業にすべての人が勤められるわけでもないしね...。職場によっては育児休暇をとりにくいところもあるし...。最近のニュースも見てますか?子供を預けるところがなく、泣く泣く退職する人もいます」
「私も大学出ています。仕事辞めたくありませんでした。ですが、社内結婚した夫が転勤族なので、泣く泣く辞めました。今はスーパーでパートしています。誰も私の経歴を知らないので社員に馬鹿にされてて辛いです。結婚・出産でも仕事を辞めなくていい環境の方がうらやましいです」
30歳以下のほとんどが一生共稼ぎに
むろん、投稿主と驚きを分かち合う人も。
「物凄い批判の嵐ですけど、その反応の鋭さがそのまま大学以上でて専業主婦の女性にとって一番言われたく事を示しているのでは? と思います。確かに高等教育受けて数年からせいぜい10年ほど働いて、あとの人生無職だったら正直何のために学歴つけたのかって思いますよね。ただ日本も共稼ぎがマジョリティにシフトしましたし、現在の30歳以下の世代は殆ど一生共稼ぎになると私は思います」
一人一人の問題ではなく、やはり社会の問題だという指摘もある。
「個人の選択ミスではなく、教育システムが社会と連動していないからです。例えば、自分が将来どこに就職し、誰と結婚し、どこに住むかなどわかりませんよね?どこにいても、誰と暮らしても安定した生活ができるようなシステムを作るのが本来あるべき姿でしょう」
「日本の会社制度が大きいのではないでしょうか。転勤もありますし。よく考えてください。朝早くから夜遅くまで帰ってこない男性の働き方を変えない限り、女性は家の事と子育てだけでも結構大変、そこへきて稼ぐ役割までどっぷり背負わされるわけですよ」
多くの回答を見て、投稿主は「転勤族だったり、保育園に入れなかったり、止むを得ず退職した方を取り上げたわけではないのです。何も考えずに仕事を辞めて、『時給の低いパートしか無い』と嘆いている人達に、なぜ辞めちゃうの?と問いたかったのです」とフォローを寄せた。
専業主婦でも、共働きでも、本人が幸せであることが一番なのは当然。それを了解したうえでも、女性が大学で学んだことを社会に生かしていくのはどういうことか、という根本的な問いには、なお答えがはっきりしていないようにも見える。(KM)