「読むだけで変わるエントリーシート」講座4回目は「また」「あと」の多用です。
私が「また」「あと」の多用を愚と知ったのは、とある就活イベントのことでした。私は某企業の採用担当者氏にブチ切れたのです。
すっきりさせるには、こうする
その人の話、内容はなかなかよかったのですが、問題は、長い。話が長い(2回目)。
予定が30分のところ45分になるわ、イベント最後の企業講評でも10分以上、だらだら話しやがって(殺意)。私はとうとうブチ切れてしまいました。「話、長いしさあ」。おかげで「他人の振り見て我が振り直せ」のことわざ通り、私も話の長さには相当注意するようになりました。
さて、この採用担当者氏の話の長さの象徴が、接続詞の使い方です。やたらと「また」「あと」を使っていました。多用すると、話の終わりが見えないので、冗長な印象を高めます。
実はこれ、文章が下手な人の特徴でもあります。
学生向けのエントリーシート解説講座で二人の講師が話をしたとしましょう。内容はほぼ同じ、表現の違いにご注目ください。
〔講師A〕
「エントリーシートで大切なことは、文章表現です。それも文末を適度に変えていくことが大事です。〈中略〉。あと、接続詞の使い方も重要です。〈中略〉。また、数字の使い方は気を付けましょう。〈中略〉。また、自己PRとガクチカネタをどうするか、ここも重要です。それについては、次回、解説しますので、よろしければ講座にご参加ください」
〔講師B〕
「エントリーシート作成で気を付けたい文章表現は3点あります。1点目は、文末。適度に変えていきましょう。〈中略〉。2点目は、接続詞です。「また」「あと」の使い方は特に注意してください。〈中略〉。3点目は、数字の使い方です。〈中略〉。ここまで、文章表現について、3点、お話しさせていただきました。では、肝心の内容、それも自己PRとガクチカネタはどう書くべきでしょうか。それについては、次回、解説しますので、よろしければ講座にご参加ください」
講師Aの話し方、どうです? 「また~、あと~、また~」と、いつ終わるかわかりませんね。内容がよくても「また」「あと」の多用で、話の先が見えないのです。聞かされる学生はたまったものではありません。
講師Bはどうでしょうか。話している内容は同じです。なのに講師Aより、すっきりして分かりやすいという印象を持つ方が多いはず。
まず内容について、先に「3点あります」と提示しています。そのうえで「1点目は~。2点目は~。3点目は~」。この表現だと、聞き手は、イライラすることがありません。
「並列」では違いを強調できない
同じことがエントリーシートにも言えます。伝えたい内容が複数ある場合、学生は「また」「あと」を多用してしまいます。それで、読み手はストレスを感じます。そこをうまく整理すれば、「また」「あと」を多用せずに済みます。
講師の例に戻ると、AとBではもう1点、大きな違いがあります。
どちらの講師も締めくくりに「自己PRとガクチカについては次回解説しますので、よろしければ講座にご参加ください」と述べていますが、表現が違います。
講師Bは、今回は文章表現について3点話をした、では内容であるじこPRとガクチカはどう書くか、それについては次回話をする、と整理して学生に伝えています。すなわち、
今回とは中身が変わるので次回もぜひ参加して、と強調しています。
講師Bはどうでしょうか。「また、自己PRとガクチカネタをどうするか、ここも重要です。それについては、次回、解説しますので......」。次回の説明についても、「また」を使用しています。つまり、今回解説した文章表現と、次回解説したい自己PRとガクチカが並列になってしまっています。これでは、参加学生は次回の話に新味を感じることができず、うんざりしてしまうに違いありません。
では、就活生は、「また」「あと」をどう使えばいいでしょうか。エントリーシートで使うのは構いません。ただし、です。
書きあげてから、「また」「あと」を何度も使っていないか、確認してください。もしも2回以上使っていたらアウト、と思ってください。「2回以上」とは、「また」を2回、という意味ではありません。「また」と「あと」を1回ずつでもアウト。
1000字以上、書くというのなら話は別です。大体のエントリーシートは1項目あたり200字か300字、長くても500字程度です。であれば、「また」「あと」を2回以上使うと、くどくなります。文章のリズムを出す、という意味でも「また」「あと」を消しましょう。
そして、前後を調整して、「伝えたいことは2点ある。第一に~、第二に~」と、変えてみてください。同じ内容でも、読みやすさが大幅に改善します。
この「また」「あと」表現、就活生ばかりか、内定学生や社会人でも怪しいところです。ある私の知人も、文章や会話でやたらと使いたがる方でした。私がそのことを指摘すると、それはそれは気分を害されて、他の事情も合わさって、国交断絶状態に。「あと」、その後日談についてもお話ししたいのですが、それは「また」。(石渡嶺司)