「並列」では違いを強調できない
同じことがエントリーシートにも言えます。伝えたい内容が複数ある場合、学生は「また」「あと」を多用してしまいます。それで、読み手はストレスを感じます。そこをうまく整理すれば、「また」「あと」を多用せずに済みます。
講師の例に戻ると、AとBではもう1点、大きな違いがあります。
どちらの講師も締めくくりに「自己PRとガクチカについては次回解説しますので、よろしければ講座にご参加ください」と述べていますが、表現が違います。
講師Bは、今回は文章表現について3点話をした、では内容であるじこPRとガクチカはどう書くか、それについては次回話をする、と整理して学生に伝えています。すなわち、
今回とは中身が変わるので次回もぜひ参加して、と強調しています。
講師Bはどうでしょうか。「また、自己PRとガクチカネタをどうするか、ここも重要です。それについては、次回、解説しますので......」。次回の説明についても、「また」を使用しています。つまり、今回解説した文章表現と、次回解説したい自己PRとガクチカが並列になってしまっています。これでは、参加学生は次回の話に新味を感じることができず、うんざりしてしまうに違いありません。
では、就活生は、「また」「あと」をどう使えばいいでしょうか。エントリーシートで使うのは構いません。ただし、です。
書きあげてから、「また」「あと」を何度も使っていないか、確認してください。もしも2回以上使っていたらアウト、と思ってください。「2回以上」とは、「また」を2回、という意味ではありません。「また」と「あと」を1回ずつでもアウト。
1000字以上、書くというのなら話は別です。大体のエントリーシートは1項目あたり200字か300字、長くても500字程度です。であれば、「また」「あと」を2回以上使うと、くどくなります。文章のリズムを出す、という意味でも「また」「あと」を消しましょう。
そして、前後を調整して、「伝えたいことは2点ある。第一に~、第二に~」と、変えてみてください。同じ内容でも、読みやすさが大幅に改善します。
この「また」「あと」表現、就活生ばかりか、内定学生や社会人でも怪しいところです。ある私の知人も、文章や会話でやたらと使いたがる方でした。私がそのことを指摘すると、それはそれは気分を害されて、他の事情も合わさって、国交断絶状態に。「あと」、その後日談についてもお話ししたいのですが、それは「また」。(石渡嶺司)