ほぼ収入のない、元ホストの「ヒモ」を飼うようになって1年と数か月。女の自己満足を叶えてくれる彼のことを、私は敬意を込めて「ヒモさん」と呼んでいるが、なぜ私レベルの収入でもヒモを養えるのか、遅まきながらようやく分かった。ヒモさんは、まれに見る「金のかからない男」だったのだ。
趣味が天体観測と釣りとは安上がり
「やべぇ、ちょっと車停めていい!?」先日、2人で石川県の田舎をドライブしていたときのこと。日がとっぷりと暮れて、澄んだ空には星が浮かんでいた。ヒモさんはテンション高く、車の外に出て空を見上げ始める。
「やっぱ、東京の空と全然違うわ、すげぇ!」
彼は裸眼1.8の視力を存分に活かして、天体観測を楽しんでいるのだった。なんとかの位置にシリウスがあって、アルタイルがどうで、あの星とこの星を組み合わせると「冬のダイヤモンド」と呼ばれるなんとかが出現する、とか、やたらと天体に詳しい。スマホの無料アプリで星の位置を確認し、ニコニコと嬉しそうだ。
ヒモさんの趣味は「天体観測」である。かかる費用、ゼロ円。あとはよく「釣り」へ行くが、釣り道具は中古で買えば数千円ですみ、何年ももつ。毎回のエサ代は私が負担するとしても、300円ほど。はじめは「え、こんなに安いの?」と驚いた。
私レベルの収入でもヒモさんを満足させられるのは、彼が徹底して「趣味にお金を使わない男」だからである。これが「アイドルの応援」とか「ゴルフ」「海外旅行」などの、多額の出費を伴う趣味であれば、私などが支えるのはとうてい無理である。