苦しみ伴う大人のバレンタイン 「感謝」に値付けをするようで

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「感謝」に予算なんて、苦しくて

   よく、「芸能人の誰それさんは差し入れ上手で......」みたいなネット記事を見かけるが、芸能人の誰それさんはきっと、何万円もかけて「印象に残る差し入れ」をしているのだと思う。そうでもしないと、普段からいろんな差し入れに触れている人たちの印象には、とても残らないだろう。もちろん、自分は芸能人ではないが、テレビの現場でお世話になっている1人ひとりに思いを込めて配ろうと思ったら、8000円じゃすまない気がしてきた。

   スタッフさんたちの顔が思い浮かぶ。感謝の気持ちを、1人あたり数百円ですまそうなんて、なんだか申し訳ない。会社員の頃と違って、本気で感謝の意を表したいと思っているのは確かだが、心からの「感謝」に予算をつけようとすると、ひどく苦しいのだ。好意をお金に換算するのが苦しい。

   そもそもがプライスレスなものだから、予算は青天井になってしまう。お金をかければかけただけ、豪華な演出と表現ができるし、実際お金をかける人もいるが、私には感謝の気持ちを伝えるために何万円も使う度胸がない。結局ケチなのだ。ドケチな人間が、予算のことばかり考えながら選んだチョコなど、あげないほうがまだマシではないか。

   バレンタインまであと少し。一体、どうすれば我が胸中の「ありがとう」を昇華させられるのか、本気で悩んでいる。「1人あたり10円の駄菓子チョコでいいだろう」と、ドケチを貫いていた会社員時代の方が、まだ迷いはなかったかもしれない。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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