先日、社民党が本部ビルの再移転と職員のリストラを計画中との報道があった(2017年1月27日付読売新聞)。
実は、社民党は2005年にも職員の整理解雇を行ったことがある。「労働者の党」が自分のところの職員を解雇したのだから赤っ恥もいいところだ。それ以来、同党が何を言っても筆者にはもはやギャグにしか聞こえない。
弱者向けセーフティネットなのに
派遣切り問題の際にテレビ朝日の報道番組に出演した時、辻元清美議員(当時社民党)が「企業に雇用を守らせろ、非正規は正社員化を義務付けろ」みたいなことを延々言うだけで議論にならないので「あんたのところは職員を3割ほどリストラしてるクセに何言ってるんですか」と返してあげたら、金魚鉢から飛び出した金魚みたいに口をパクパクさせておられた記憶がある。
というわけで消滅カウントダウンに入ったと思われる社民党だが、現在議論されている金銭解雇ルールの論点整理用の素材として、最後に有効活用させていただこう。
社民党の職員の一人、A氏が解雇され、不当解雇だとして訴えたとする。半年ほど裁判で争った後に不当解雇だと認められたものの、今さら職場には戻りづらいし、実際に仕事もほとんどない状態だ。そこで復職のかわりに一定金額を支払うことで雇用関係を解消させようというのが金銭解雇ルールだ。これまで事実上野放しにされてきた中小企業の解雇に一定の歯止めをかけ、中小の労働者への補償も実現できるわけだから、弱者向けの貴重なセーフティネットと言っていい(※)。
党の側も不当解雇に当たらないよう、人選や配置転換の有無などについて従来よりも慎重に手続きを進めるだろうから、その点でも労働者保護に役立つことになる。
とはいえ、これが気に入らない"労働者"も存在する。大手企業の正社員を中心とした連合(日本労働組合総連合会)だ。
実は持てる者の側に立っているだけ
彼らの場合は多くが文字通りの終身雇用が保証され、早期退職の対象となっても最低2年分の賃金が退職金に割増しされるのが相場だ。中には朝日新聞社のように「45歳以降で早期退職に応募すれば、現在の年収の半分を10年間支給」なんていう夢のような会社もある。そういうところで働く正社員からすれば「なんで中小企業の労働者のために、自分たちまでたかだか数か月分の手当で解雇されなければならないんだ」というのが正直なところだ。
というわけで、この弱者向けの規制強化案に対し連合は全力で反対し、これまでどおり自由に解雇したい中小企業の経営者もそれに同調、さらには左派勢力もそれを支援するというわけのわからない状況が出現している。もちろん、我らが社民党も金銭解雇ルールには反対の立場だ。
「なぜ左派が弱者支援に反対するのか」と疑問を持つ人もいるだろうが、戦後の社会党や共産党といった革新政党の支持基盤が伝統的に大企業や公務員の労組であることを考えれば特に矛盾はない。いつもどおり、弱者の味方をするフリをしつつ、持てる者の側に立っているだけの話だ。
さて、まことに残念な話ではあるが、誰を代表にして何にどう取り組んだところで、もはや社民党の消滅は時間の問題だと筆者は考えている。ニーズが無いのだから仕方ないことではあるが、55年体制の一角を占めた旧・社会党の最後としてはあまりにも寂しい。しかも労働者の党なのに2回もリストラやって消滅なんて、永遠のネタ政党として人々の記憶に残るだろう。
そこで提案だが、最後に金銭解雇の導入に賛成した上で、自ら率先してその「労働者側から見たメリット」をPRしてはどうか。
「ウチも何人かクビにしましたが、最終的に〇〇か月分の賃金を支払って円満かつ速やかに再就職いただいております、金銭解雇にはこんなにメリットがあるんです、民進党とか共産党なんてインチキですよ」とぶっちゃけてしまえば、最後に一本筋を通したと、分かる人には分かってもらえるはずである。
ネタ政党として歴史に名を残すより、そのほうがよっぽどましだと思うのは筆者だけだろうか。(城繁幸)
※とはいえ、実際に中小企業の労働者が自腹で裁判を起こすケースは多くはないだろう。裁判を経ずに一定の金額支払いで解雇を認めるほうがセーフティネットとしてはより効果的だ。