実は持てる者の側に立っているだけ
彼らの場合は多くが文字通りの終身雇用が保証され、早期退職の対象となっても最低2年分の賃金が退職金に割増しされるのが相場だ。中には朝日新聞社のように「45歳以降で早期退職に応募すれば、現在の年収の半分を10年間支給」なんていう夢のような会社もある。そういうところで働く正社員からすれば「なんで中小企業の労働者のために、自分たちまでたかだか数か月分の手当で解雇されなければならないんだ」というのが正直なところだ。
というわけで、この弱者向けの規制強化案に対し連合は全力で反対し、これまでどおり自由に解雇したい中小企業の経営者もそれに同調、さらには左派勢力もそれを支援するというわけのわからない状況が出現している。もちろん、我らが社民党も金銭解雇ルールには反対の立場だ。
「なぜ左派が弱者支援に反対するのか」と疑問を持つ人もいるだろうが、戦後の社会党や共産党といった革新政党の支持基盤が伝統的に大企業や公務員の労組であることを考えれば特に矛盾はない。いつもどおり、弱者の味方をするフリをしつつ、持てる者の側に立っているだけの話だ。
さて、まことに残念な話ではあるが、誰を代表にして何にどう取り組んだところで、もはや社民党の消滅は時間の問題だと筆者は考えている。ニーズが無いのだから仕方ないことではあるが、55年体制の一角を占めた旧・社会党の最後としてはあまりにも寂しい。しかも労働者の党なのに2回もリストラやって消滅なんて、永遠のネタ政党として人々の記憶に残るだろう。
そこで提案だが、最後に金銭解雇の導入に賛成した上で、自ら率先してその「労働者側から見たメリット」をPRしてはどうか。
「ウチも何人かクビにしましたが、最終的に〇〇か月分の賃金を支払って円満かつ速やかに再就職いただいております、金銭解雇にはこんなにメリットがあるんです、民進党とか共産党なんてインチキですよ」とぶっちゃけてしまえば、最後に一本筋を通したと、分かる人には分かってもらえるはずである。
ネタ政党として歴史に名を残すより、そのほうがよっぽどましだと思うのは筆者だけだろうか。(城繁幸)
※とはいえ、実際に中小企業の労働者が自腹で裁判を起こすケースは多くはないだろう。裁判を経ずに一定の金額支払いで解雇を認めるほうがセーフティネットとしてはより効果的だ。