このJ-CASTニュースはもちろんのこと、ネットニュースには必ず見出しが入っています。理由は簡単で、見出しがあれば本文が読みやすくなるからです。では、エントリーシートにも見出しを入れたほうがいいのでしょうか。「読むだけで変わるエントリーシート」講座の3回目は見出しについてです。
「つけるべき派」就活塾によれば
一般に、ある程度長い文章では、見出しを入れるとテンポよく読めます。雑誌では、記事のタイトル(大見出し)とは別に、本文中に小さな見出しを入れていきます。これを小見出しといいます。そのまんまですね。
では、雑誌記事ほど文字数の多くない、エントリーシートはどうでしょうか。
ある就活塾では、「見出しはつけるべき」と指導しています。たとえば「あなたの職業観についてお聞かせください(130字以内)」という設問に対して「見出しの有無でこう変わる」と次のように指導しているそうです。
〔例〕
私は就職先を選択するとき、次の3点を重視しています。自分の能力を最大限に引き出てくれる環境が整っていること、社会を前進させようとする影響力。最後に仕事自体を楽しめること。この3つの基準を私の中で満たす企業こそが貴社である、と確信しております。
〔修正(改行可能な場合)〕
【私の職業観とは】
私は就職先を選択するとき、次の3点を重視しています。
1:自分の能力を最大限に引き出てくれる環境が整っていること。
2:社会を前進させようとする影響力。
3:最後に仕事自体を楽しめること。
この3つの基準を私の中で満たす企業こそが貴社である、と確信しております。
〔修正(改行ができない場合)〕
【私の職業観とは】私は就職先を選択するとき、次の3点を重視しています。自分の能力を最大限に引き出てくれる環境が整っていること、社会を前進させようとする影響力。最後に仕事自体を楽しめること。この3つの基準を私の中で満たす企業こそが貴社である、と確信しております。
この塾の内部サイトとマニュアルでは、この修正について次のようにまとめています。
「3つの文章の内容はほぼ同じ。だが、変更後の方が読みやすくなり、情報が目に入ってくる。わずかな差かもしれないが、それが絶対的に内定を取れるかどうかの差に変わってくる」
文字数が制限されている場合は
見出しの有無以前に例文が絶望的なほどのひどさです。が、ここでは本題の見出しに絞って解説します。
文字数が130字以内とかなり限られています。そこに見出しをつけたらどうでしょうか。改行不可の場合でも、9文字使っています。改行が可能な場合は1行分となるわけで、20~30字にも相当するでしょう。少ない文字数に制限されているときに見出しを使うと、さらに内容が薄くなります。
しかも採用担当者によっては、「書けないから見出しでごまかしているのだろう」と誤解して、大減点とすることも十分に予想されます。文字数が制限されている場合は、見出しはつけないほうが無難なのです。
1000字以上の小論文ならまだしも、200字から400字、多くても500字程度しか書けないエントリーシートで見出しを使うことに、私は否定的です。
しかし、中にはどうしても見出しを使いたいという学生もいるでしょう。そこで、見出しの原則を次の4点にまとめました。
原則1:文字数制限300字未満のときは、見出しを使わない
300字未満なら、文字数がもったいない。見出しはやめておきましょう。
原則2:見出しはYahoo!ルールの13.5字から18字程度
Yahoo!は、ヤフトピに使う見出しの文字数が13.5字以内(句読点、感嘆符などを含む)と決まっています。この少ない文字数で、いかにして読者の目を引くか、Yahoo!ニュース編集部は心血を注いでいます。
見出しに20字、30字を費やす就活生がそこそこいます。見出しに文字数を割くくらいなら、本文に使いましょう。見出しはひとまずYahoo!記事と同じく13.5字が目安。どうしても、というなら18字以内に収めてください。
情報量を増やす工夫とは
原則3:見出しは本文に出てくる内容から取り出す
見出しは本文の内容とかけ離れたものではいけません。まずは、次のエントリーシートを。題は、「あなたの学生生活を紹介してください」。
〔学生の例〕
【魂と出会いを大事にした3年間】
私の学生生活はサークルとアルバイト、勉強とそれぞれ充実していました。サークルでは......。アルバイトでも......。学業では......。サークル、アルバイト、学業にそれぞれ共通しているのは、出会いです。出会いこそ大事、とその思いをいつも持っていました......。
見出しとして決定的にまずいのは、「魂」の話が本文に一切書かれていない点です。「出会い」はあるから、これを見出しに取るのはいいでしょう。しかし、「魂」はありません。
本人にすれば、「魂」にいろいろな思いがあるからこそ、見出しに付けたのでしょうが、そうであれば本文にも書く必要があります。
本文に書かれていない内容の見出しを「幽霊見出し」といいます。これはアウト、とご理解ください。
原則4:情報量を増やす工夫をし、場合によってはカットする
文字数が少ない見出しでも、工夫によって情報量を増やすことができます。次の例文に付ける見出しを考えてみてください。
「一か月の短期留学でフランス語を習得。それまで引っ込み思案だったが、積極的に行動するようになった。少ない時間でも工夫で効率よく勉強する習慣が身に付いた。同じ語学学校の他国の友人とはお互いにフランス語で喧嘩もすれば、恋話もするほどに上達した」
学生が付けた見出しは「短期留学で得た積極性と勉強習慣」。13.5字の目安からすると、ちょっと長いですね。ある就活サイトのエントリーシート解説コーナーでは、「短期留学で得た積極性」とまとめるように指導しています。
確かに短くはなりましたが、どうでしょうか。留学なり語学研修をアピールする学生はみな、「積極的になった」とおしなべて話すわけです。それを本文で書くのはまあいいでしょう。その過程こそ、採用担当者が読みたいところです。
しかし、見出しで「短期留学で得た積極性」とまとめると、いかにも紋切型でつまらなさそう。抽象表現を使うぐらいなら、見出しをカットするほうがまだましです。
では、どうやったら情報量を増やせるか。この学生は1か月で、喧嘩も恋話もフランス語でできるようになった、と書いています。そのネタを見出しに取ってみたらどうでしょうか。「フランス語留学で喧嘩も恋バナも」。15字。なんか、「積極性」がいっそう具体的に見出しに反映していますね。
さらに、です。フランスは漢字表記だと「仏蘭西」、フランス語は省略すれば「仏語」。
「仏語留学で喧嘩も恋バナも」。これでピタリ13字。短くしてもなお、最初の見出しより具体的で情報量が増えています。
どうしてもエントリーシートに見出しを使いたいというのであれば、上記4点にこだわってみてください。(石渡嶺司)