情報量を増やす工夫とは
原則3:見出しは本文に出てくる内容から取り出す
見出しは本文の内容とかけ離れたものではいけません。まずは、次のエントリーシートを。題は、「あなたの学生生活を紹介してください」。
〔学生の例〕
【魂と出会いを大事にした3年間】
私の学生生活はサークルとアルバイト、勉強とそれぞれ充実していました。サークルでは......。アルバイトでも......。学業では......。サークル、アルバイト、学業にそれぞれ共通しているのは、出会いです。出会いこそ大事、とその思いをいつも持っていました......。
見出しとして決定的にまずいのは、「魂」の話が本文に一切書かれていない点です。「出会い」はあるから、これを見出しに取るのはいいでしょう。しかし、「魂」はありません。
本人にすれば、「魂」にいろいろな思いがあるからこそ、見出しに付けたのでしょうが、そうであれば本文にも書く必要があります。
本文に書かれていない内容の見出しを「幽霊見出し」といいます。これはアウト、とご理解ください。
原則4:情報量を増やす工夫をし、場合によってはカットする
文字数が少ない見出しでも、工夫によって情報量を増やすことができます。次の例文に付ける見出しを考えてみてください。
「一か月の短期留学でフランス語を習得。それまで引っ込み思案だったが、積極的に行動するようになった。少ない時間でも工夫で効率よく勉強する習慣が身に付いた。同じ語学学校の他国の友人とはお互いにフランス語で喧嘩もすれば、恋話もするほどに上達した」
学生が付けた見出しは「短期留学で得た積極性と勉強習慣」。13.5字の目安からすると、ちょっと長いですね。ある就活サイトのエントリーシート解説コーナーでは、「短期留学で得た積極性」とまとめるように指導しています。
確かに短くはなりましたが、どうでしょうか。留学なり語学研修をアピールする学生はみな、「積極的になった」とおしなべて話すわけです。それを本文で書くのはまあいいでしょう。その過程こそ、採用担当者が読みたいところです。
しかし、見出しで「短期留学で得た積極性」とまとめると、いかにも紋切型でつまらなさそう。抽象表現を使うぐらいなら、見出しをカットするほうがまだましです。
では、どうやったら情報量を増やせるか。この学生は1か月で、喧嘩も恋話もフランス語でできるようになった、と書いています。そのネタを見出しに取ってみたらどうでしょうか。「フランス語留学で喧嘩も恋バナも」。15字。なんか、「積極性」がいっそう具体的に見出しに反映していますね。
さらに、です。フランスは漢字表記だと「仏蘭西」、フランス語は省略すれば「仏語」。
「仏語留学で喧嘩も恋バナも」。これでピタリ13字。短くしてもなお、最初の見出しより具体的で情報量が増えています。
どうしてもエントリーシートに見出しを使いたいというのであれば、上記4点にこだわってみてください。(石渡嶺司)