その6「饒舌な車内放送」 【こんなものいらない!?】

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   郊外電車が終点に近づく。車内に車掌の放送が流れる。

「終点の〇〇に到着です。車内にお忘れ物、落し物がございませんよう、ご注意ください」
  • 台北の地下鉄の車内。この手すりならつかまりやすいじゃないか
    台北の地下鉄の車内。この手すりならつかまりやすいじゃないか
  • 台北の地下鉄の車内。この手すりならつかまりやすいじゃないか

僕は幼稚園児じゃない

   ご注意はありがたいけど、これを聞いて、ああそうだと思い、忘れ物、落し物がないかどうか、身の回りを見渡す乗客がどれだけいるだろうか。雨模様の日には「本日は傘の忘れ物が多くなっています」という放送が決まって加わる。

   こんな放送をする鉄道会社の気持ちはよく分かる。傘に限らず、車内には何かと忘れ物、落し物が少なくない。鉄道会社としては、それを保管しておかなければならない。捜しに来た乗客の相手もしなければならない。面倒である。できるだけ忘れ物、落し物はしてほしくない。

   でも、僕にはどうも耳障りな放送である。その僕がよく使う東京の郊外電車では、始発駅を出る時の放送がまたうるさい。

「お荷物がほかのお客様のご迷惑にならないよう、前に抱えてお持ちください」

   そんなこと、分かってるよ。僕は幼稚園児じゃないんだ。放送はさらに続く。

「揺れる場合がありますので、ご注意ください。お立ちのお客様はつり革や手すりにおつかまりください」

   そのようにできる場合もある。でも、満員電車では手の届くところにつり革や手すりがないこともよくある。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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