テレビラジオ出演、実は損かも 物書きの私が大事に守るべきは

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その傲慢さが見抜かれて

   もちろんテレビの現場は、普段なら絶対に会えないような方と知り合えるので楽しい。ピシっとした緊張感もあって、その背筋が伸びる感覚は好きだ。しかし、「テレビに出まくる」ことは、自分のクビを締めることになるのではないかと思う。

   もともと「超有名になりたい」とか、「タレント並みの存在感を発揮したい」タイプの人間ではないから、一気に注目されるとその後が怖い。有名になってちやほやされれば、私のような小者はすぐに思い上がる。実際、その傲慢さが見抜かれて、叩かれる頻度は格段に増えた。テレビに出て喜んでくれるのは家族と地元の友人だけで、ネット上ではアンチが増えたくらいである。

   何より、月に3~4回のメディア出演をこなしていた私より、本業の原稿料や印税で利益を得る人のほうが、収入が多いと知ったときはがく然とした(たまたま聞いた話なので、テレビの恩恵を受けているライターもたくさんいるとは思うが)。

   この現実を目の当たりにして、私は考えが変わった。不器用な私は、メディア出演に夢中になると、本業を疎かにしてしまう。それは長期的に見て、確実に「損」である。それで昨年の後半は、出演依頼がきてもそれとなく断るようになった。

   細く長く物書きを続けたい自分にとって大切なのは、一発屋のタレントになることではない(当たり前だ)。自分の文章を買ってくれる人を地道に探し、ひたすら本業の腕を磨くことなのだ。

   年始だからか、いつにいなく真剣に考えてしまった。やっぱり私は、文章が好きだ。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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